偽物の映画館

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スピッツ『おるたな』今更感想

なかなか進まないスピッツ全曲感想シリーズですが、前回の『花鳥風月』に引き続いてスペシャルアルバムの本作『おるたな』を語っていきます!

おるたな

おるたな

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2012年リリースの3枚目のスペシャルアルバム。
前の2枚と異なり、半分ほどがカップリング曲で半分ほどがカバー曲という構成。
本作がリリースされた時は私の人生でも1番スピッツ熱が高かった高校生の頃で、だからこそハンパにカバー曲を入れた本作はどうしても許せず、正直あんまり聴いてなかったのを覚えています。
むしろ大学に入ってスピッツ以外にも好きなバンドが増えていってこだわりが薄れてきた時に、改めて聴いて私の中で再評価が進んだアルバムです。

カップリング曲はわりと軽くて激しめの、軽快なロックナンバーが多めで、その中で「夕焼け」みたいなエグいバラードが際立ちます。
一方のカバー曲は新旧、有名無名、男性女性を問わず幅広いセレクト。原曲が好きなのが2曲しかないので基本的には「スピッツのが良いじゃん!」と思ってしまいました(ファンの欲目)。

正直今でもカバーならカバーで出して欲しかったという気持ちもあるんですが(ブルーハーツとかサカナクションのカバーも聴きたかったしなぁ)、カバーと軽めのオリジナル曲で構成されているので、ある意味1番「スペシャルアルバム」という名に相応しいお祭り感のある一枚だとも言えそうです。

なお、私が持ってるこのCDは三つ折りパッケージのやつなんですが、今回聴きかえすにあたって歌詞カードを見ようと思ったら、制作ノートなるものが特典で入っていることに初めて気づきました......。ジーザス。

というわけで以下全曲感想。
なお、カバー曲についてはかなり雑になると思うので悪しからず......。
(カバー曲は括弧内がオリジナルアーティスト)



1.リコリス

「正夢」のカップリング。

フォークソングを思わせる物悲しげなアコギの音に乗せてメロディアスな歌で始まる曲。
サビに入るとバンドの演奏が入ってきて盛り上がります(ベースの入り方が最高)が、なんと歌は同じ音だけで「ふーれーあーうーこーとーかーらーはーじーめーるー」とめちゃくちゃ単調。カラオケで歌おうとしても同じ音をずっと伸ばし続けるのが大変すぎるし、この単調なメロディをさもメロディアスであるかのように歌える草野マサムネの歌唱力がヤバいっす。私が歌ったらお経だよ。
ところどころに入ってるホルン?やシンセっぽいオルガンっぽい音色が醸し出す異国情緒が歌詞にも合っていて、スピッツの曲の中でも独特の雰囲気を持っています。

歌詞もまたちょっとファンタジックな感じもあって独特。

おもしろく哀しい 旅人の話 めくる頁の先に
いきなり現れ 外した口笛 その笑顔はリコリス

絵本の中のお話のような冒頭。その中に出てくる「リコリス味」という言葉。調べてみたらリコリスってめちゃくちゃ不味いらしいんですけど(笑)。実際の味がどうこうより、「食べたことない味」「不思議な味」というニュアンス、また語感の可愛らしさから、その笑顔に(自分とは違うものを見出して)強烈に惹かれていることが分かります。

ねむたい目をしてさ 君は風の中

というところからも、どこか掴みどころがなく、自分には無関心のような君の姿が浮かび上がり、だからこそ、サビの「触れ合うことからはじめる」というフレーズで、自分と違う相手のことを知りたいという切実な願いが、あえてのお経メロディで淡々と歌われるのがエモいっす。
他にも、「となりの町まで裏道を歩け」で今の自分と違うもの、違う場所への憧憬を、「冷たいラムネ」「煙と消え去る前に」で一夏の恋・儚い恋といったイメージを想起させます。
そこから、あるいは夏休みの間だけ避暑地の別荘で会える相手への恋とか、転勤族で突然転校してきて、また突然転校していってしまう女の子への憧れに近いような気持ちになります。でも、そこにもっとこう、「死」の匂いもあるような感じもしますね。

歌詞という媒体だからこそ、情報量の少なさでいろんな物語を想像させつつ、音によって切ない感情はグッと増幅させられる、そんな理想的な歌詞だと思います。



2.さすらい(奥田民生)

カバーはスピッツの曲じゃないので手短に。
そもそも私は奥田民生のあのかったるい歌い方がそんなに好きじゃないんですけど、この曲に関してはもう草野マサムネの爽やかな歌声が合いすぎてて原曲より良いじゃん!と。
でも逆に民生がカバーしたスピッツの「うめぼし」は曲の気怠さに民生の声が合っていたので、お互いに原曲をより活かした良い交換だったんじゃないかと思います。

リコリスとは旅人というモチーフで繋がりつつ、リコリスの切なさを振り切るように、突き抜けるような爽やかさのこの曲が2曲目なのは良い曲順ですよね。




3.ラクガキ王国

「ルキンフォー」のカップリング

ハードで疾走感のあるギターリフから始まるロックナンバー。
スピッツはロックバンドなんです!とは言うものの、ここまでロック感のある曲は珍しい気がしますね。
間奏のギターソロとかもうヤバいっしょ。スピッツじゃないみたい()。
最近は歳をとってこういう曲でそんなにテンション上がらなくなっちゃいましたが、中高生の頃はめちゃくちゃこの曲好きで聴きまくってましたね。
『色々衣』までのカップリング曲に比べて、この『おるたな』に収録されている時期のカップリング曲はこういう激しめで楽しめな曲が多い気がして、現在の開けたスピッツへの兆しのようにも聴こえます。

歌詞もスピッツ自身のことを歌っているという点で後の『醒めない』『見っけ』といったシン・スピッツ(私が言ってるだけです)に通じるものがあります。

「紙で作った冠」「太陽色のマンダリン」「スピードオーバーのチビグルマ」と、価値があるとされるものとないとされるもの、大きなものと小さなものの対象が列記されます。
そして、

教科書のスミっこの ラクガキが
強大な 王国になりました

というサビ。
この、真面目なフリしてこっそり反抗してるみたいなところが凄え私だしスピッツだし私はスピッツだ!(違)
J POPという枠で捉えられることもありつつ変態さとロック魂を失わないスピッツの世界がラクガキ王国!スピードオーバーのチビグルマで駆けつけちゃいます!




4.14番目の月(荒井由実)

ユーミンスピッツの「楓」をカバーしていますが、この2曲は民生との場合とは違い、お互いにがっつり自分の作風に仕上げてる感じでこれも面白いです。
雑に言えば、「楓っぽい14番目の月」と「14番目の月っぽい楓」みたいな感じ。
原曲が軽快なテンポの曲なのに対し、こっちは重ためのバンドサウンドのロックバラードに。
テンポやリズムが違うから文字の乗せ方も違ってて、パッと聴きではあの曲のカバーとは気付かないくらい。
原曲もいいけどこっちも良いっす。




5.三日月ロック その3

スターゲイザー」のカップリング。
星と月のカップリングという美しいシングルですね。
アルバム『三日月ロック』に表題曲がなかったことから、アルバムツアーが何かのライブでその1からその4くらいまで披露された中で最も反応の良かったものをレコーディングした、というスピッツには珍しい遊びみたいな経緯で出来た曲。それにしても、「その3」までタイトルに入れるセンスはさすがですが。

しかし内容はもちろんお遊びじゃなくガチの名曲。
ギターとベースが同じリフを弾く印象的なイントロ。疾走というほどじゃないけど早歩きくらいのスピード感が心地よいロックナンバー。

ブサイクな人生を踏みしめてる

というなかなかのパンチラインからはじまるちょっと情けない歌詞の通り、メロの部分はロックなかっこよさの中にも少し気の抜けた感じもするサウンドとメロディ。
そこから、サビの美しさへの跳躍がすげえっす。伸ばしの多いサビを安定して歌いこなす草野マサムネ、簡単そうだけどこれもカラオケで歌うとクソムズなんですよね(スピッツの曲にクソとか言うな)。

さて、歌詞ですが、「ロビンソン」の歌詞は「後追い自殺」という説がファンの間では定説として流布していますが、この曲もかなりロビンソンを思わせるワードチョイスで、自殺とまでは言わなくても亡くなった君に会える日(死のお迎え)を待ち望んでいるように読みました。

ロビンソンでは「丸い窓」=死、「三日月」=セックスという解釈がされがちですが、この曲でも三日月はそのまま出てきますし、「抜け出したい気持ちなら桜が咲くたび現れる」というフレーズからは(「桜の樹の下には」......)死の匂いが濃密に漂います。
そうした死とセックスの対比を強調するように、「暖めて⇔冷やされて」「いいことも⇔やなことも」「何もない田舎道⇔人混みの駅前広場」など、全体に対比の表現が目立ちます。

最後の、

泣き止んだ邪悪な心で ただ君を想う

というところは、君を失った悲しみから、再開(=死)を希うことで「泣き止んだ」ことを「邪悪」と捉えているのかな?

冒頭のフレーズから軽い自虐ネタ系の歌かと思えば、自虐というよりは自棄にも思える悲しい歌でもあり、深いっすね。




6.タイム・トラベル(原田真二)

元々オリジナルを知らなかったのですが、聴いてみるとちょっとハスキーなハイトーンボイスはマサムネに通じるところもある気がします。
曲も、親しみやすいメロディといい、やや不思議な言葉選びの歌詞といい、原曲知らなかったらスピッツの曲だと思っちゃいそうな感じ。
アレンジとしてはオリジナルが弦をフィーチャーしているのに対し、スピッツ版はピアノ+バンドサウンド基調。しかし、静かな始まりからBメロで「デデーン」ってバンドが入ってくるところなど、雰囲気はしっかり再現していると思います。
この曲はなんといっても最後の「Uhh〜♪」のところの超音波高音ボイスがヤバいっすよね。最初は声だと思わず、シンセか何かだと思ってたんですが(あるいは音源ではフェイクなのかもしれませんが)、ライブで聴いた時には普通にここも歌ってて、客席に「ここライブで歌えるんだ......」というざわつきが広がったのをよく覚えています。マジかよ。
カバー曲だけど実は草野マサムネ史上最高音域の曲なのでは。




7.夕焼け

「群青」のカップリング。
「三日月ロックその3」の時は星と月、こちらは青と赤で対比していてやはり美しいシングル。
A面の「群青」がまさに海へ遊びに行くようなワクワク楽しい高揚感があるのに対し、カップリングのこの曲はその帰り道の楽しかった満足感と名残惜しいような寂寥感が同居したような曲です。
スピッツで泣けるバラードといえば「楓」とか「コスモス」とか色々ありますが、ピュアな哀愁感と美しさの結晶のようなこの曲が最も純粋に美しいスピッツバラードなんじゃないかと個人的には思っています(てか全部秋の季語だな)。

といってもそこはロックバンド・スピッツ。イントロから重厚なギターの音、うねるベースライン、シンプルながらところどころアクセントを入れてくるドラム、何より間奏のギターがもうロックすぎませんか。曲の雰囲気でなんとなく聴き流しちゃうけど、これ見よがしなくらいにテクニック詰め込んじゃいましたみたいな感じでカッコ良すぎます!

歌詞はこれに関しては幸せな解釈でいいんじゃないかと思います。
僕(という一人称ら出てきませんが)と君は普通に付き合ってたり結婚してたりして、幸せの只中にいて、だからこそその幸せに終わりの気配を見出してしまう感覚、なんだとしたら、めちゃくちゃ分かります。

例えば夕焼けみたいな サカリの野良猫みたいな
訳わからんて笑ってくれてもいいけど

間もなく沈んでしまうからこそ最も美しい夕焼けに対する、サカリの野良猫のように理屈じゃない狂おしく切ないほどの愛のような気持ち。
そして、それはある種独りよがりな気持ちなのかもしれないけれど、君は君で僕とは違う独りよがりを抱いているならそれでいいのではないか、と思います。

他にも、「難しいかな」「悲しいほどに」と、あえてネガティブな言葉を入れることで幸せを強調しているのが凄いですね。
というより、やはり幸せであってさえネガティブな方向へ考えが及んでしまう根暗陰キャの哀しみの歌なのかもしれません。




8.まもるさん

「若葉」のカップリング。
「夕焼け」の美しい余韻をぶち壊すような(失礼)明るい曲。
「デーン!」ってはじまってロックなギターリフが印象的。サビでシンセっぽい音が入ってたりはするけど基本的にはバンド4人の音メインのシンプルなサウンドで、気持ちよくカッコよいです。
「若葉」のシングルはたしかスピッツにハマる前夜くらいの頃に中古屋さんで見かけて買った記憶があり、その時は私も若かったので激しいロックサウンドのこの曲の方が表題曲より好きだったんですけど、今はおじさんなのでこの曲より若葉派になってしまいました。そういうのも長くファンで居続けることの醍醐味ですよね。

まもるさんというタイトルはそのまま「君を陰ながら守ります」さんということ。
最近あんま聞かないけど、昔のJ POPにありがちな『俺が君を守るよ!』みたいな歌詞って笑止千万な気がしちゃいますが、この曲は多分それへの皮肉でもあるんでしょう(なんせ歌ウサギやグリーンでもJ POPをディスってるマサムネセンセですから......)
そう、守るは守るでもスピッツの場合は勝手に守ってるつもりのストーカーを思わせる歌なんですよね。
まあ
細部を読んでくとそれだけでもなさそうな読みきれなさがあるのですが、私はストーカータイプの人間なのでそう解釈してます。

どんな役まわりも いただけるなら
疲れ果てるまで 演じてみるかな

というところの噛ませ犬感とか好きです。




9.初恋に捧ぐ(初恋の嵐)

初恋の嵐というバンドをこのスピッツによるカバーで知って、一時期ハマったんですよね。
詳しくはググってほしいですが、この曲がデビューアルバムのリード曲なんだけど、その一枚を出してボーカルの方が亡くなったという経緯のあるバンドです。

夭折した西山さんへの敬意や、埋もれてしまった才能に光を当てたいという思いからか、このアルバムの他のカバー曲とは違いスピッツも原曲通りのアレンジで演奏しています。
それだけに、若手バンドの荒削りさと日本のポップシーンの最前線を走るベテランとの差がはっきりと出てしまってはいます。
しかし、この曲に関しては原曲の荒削りなサウンドの方が「初恋」の青い衝動をよく表しているようにも感じます。
スピッツが人の曲をカバーしても必ず「スピッツのが良いじゃん」と言ってしまう信者ですが、この曲だけはそうとも言い切れないくらい原曲に魔法があるんですよね。
その魔法が解けないようにアレンジを変えずコピーすることを選択したスピッツはさすがだと思いますけどね。結局信者なので褒める。




10.テクテク

「春の歌」との両A面。

リコリス」や、「花の写真」(シングル「つぐみ」のカップリング)など、この時期のスピッツカップリングには異国情緒を前面に押し出したサウンドの曲が多い気がします。
この曲も、最初は歌始まりでマサムネの美しい声が響きますが、その後すぐにアコーディオンの音がバンドと共に入ってきてヨーロッパの童謡みたいな雰囲気になります(適当ですけど)。
他にも、崎ちゃんはドラムの代わりにジャンベっていうアフリカの打楽器を叩いてるらしいし、他にもチョンチョンって音とか、シャララ〜ンっていう鐘みたいな音(ウィンドチャイムっていうらしい)とか、変わった音が色々入ってて、優しく切なく懐かしくも見知らぬ異国の雰囲気があって引き込まれてしまいます。

また、この曲はPVが最高なんですよね。
木の実の怪獣みたいなキャラクターと少女が出てくるアニメーションで、スピッツには珍しく本人たちが登場しないストーリーもののPVになってます。
これがめちゃくちゃ泣けるんですけど、この寓話のようなPVが歌詞にばっちり合っていつつ、歌詞に出てくる「メール」というワードの現実味とのギャップもあってエモいです。
その歌詞の内容に関してはこれも珍しくどストレートな喪失の歌なので、特に細かく語ることもないですけどただエモい。

特別って呼びたい もう迷わない
ふりむきつつ 僕は歩いてく
雨の中を 日差しの中を 闇の中を 思い出の中を

闇の中を、思い出の中をという内向性がスピッツらしくも、歩いてくというところに君と出会えた奇跡がこの胸に溢れてる感じもして泣けるすぎる。
そうなんすよね、もう、全てのフレーズがストレートにエモ腺を刺激してくるので心臓から涙が溢れます。




11.シャララ

「魔法のコトバ」のカップリング。
また「テクテク」の美しい余韻をぶち壊すように(褒め言葉)、激しめの曲。
ただ「まもるさん」の確信犯的な気持ち悪さとは違い、自分の劣等さを分かってて歌ってる投げやりさが凄く刺さります。

この歌詞も、特に解釈とかの余地もなくそのまんま、ノリツッコミですよね。

いつも正しくあいさつ 裏表無い笑顔で
明るい明日を信じて さっそうと駆け抜けてく

というAメロの歌詞に「嘘やん!」と思ってるとサビの

そんなのは俺じゃない

で嘘やったんかーい!と盛大に突っ込んでしまう、スピッツでも最大のノリツッコミソングだと思います。
この、「そんなの」的な人間への嫉妬と羨望と軽蔑と嫌悪が詰まっていそうな感じがめちゃくちゃ普通にわかりみ強くて、ある意味スピッツで一番等身大に共感できる曲だと思います。刺さるぜ。

印象的なギターのイントロから、疾走感あふれるギターロックなんですけど、フルートやホルンといった楽器が入ってくることでオシャレさとかじゃなく、逆になんかやけっぱちな感じが出てて面白いです。



12.12月の雨の日(はっぴいえんど)

日本語ロックの始祖とされるはっぴいえんどのゆでめんアルバムに入ってる、日本語ロックの夜明けぜよな曲。
当然、美しい日本語の歌詞でロックするスピッツが影響を受けてないわけはないのでしょう。
スピッツには珍しい(最近は特に)気だるさと、サイケな感じのイントロや間奏のギターが印象的。
ただ、原曲はもっとなんですけどね。やっぱりスピッツがやるとちょっと爽やかでスッキリしちゃう。どっちも好きですけど、原曲が偉大すぎてスピッツの方がいいと手放しには言えないですね。
草野マサムネの無駄遣いってくらい抑制された歌のメロディなんだけど、その分コーラスの美しさが際立ってるのが良いっすね。




13.さよなら大好きな人(花*花)

今回のカバーの中で最も、というか唯一スピッツからかけ離れた印象の選曲で、はじめてトラックリストを見た時には目を疑いました。
原曲は私がたぶん小学校低学年くらいの頃に出た曲で、その後卒業式で卒業する上級生のために歌おうみたいなコーナーで歌わされたりした嫌な思い出しかないんですが(ごめんなさい)、 スピッツが歌うと良いなぁと思いますね(信者)。
原曲が弦をフィーチャーしてるのに対し、スピッツはバンドだけのシンプルなサウンドですが、切なくも暖かい空気感はやはりしっかり再現されています。
ギターも歌の部分ではかな〜り小さく後ろの方で鳴ってる感じで、その分ベースが動いてドラムがずっしり支えてるような印象。
ただ間奏ではギターがしっかり主張してきてロック感出してくるのもスピッツ
最後のところで一瞬アコギ弾き語りみたいになるところもエモいっす。
あと、草野マサムネがこういう本当にストレートな歌詞を歌うのも新鮮で面白いですね。スピッツの中ではストレートな曲でも一般的には捻くれてますからね。




14.オケラ

君は太陽」のカップリング。

君が「太陽」なのに対して僕は「オケラ」という、「僕らはみんな生きている」の歌詞みたいなシングルですね。

親の影響でスピッツを聴いていたところから、自分の意志で聴き始めたのがちょうどこの「君は太陽」のシングルからで、当時はお金もないのでTSUTAYAで借りて今は亡きiPod nanoに入れて毎日聴いてた思い出の2曲です。
特にこの曲は、当時まだあんま知らなかったので「スピッツこんなかっちょいい曲あるんか!」と驚いたのを覚えています。

ドラムの響く音でイキそうになるハードなイントロから、たらっとした歌に入るところは「惑星のかけら」っぽさもありつつ、歌詞のせいだけどあんなにいかがわしい()感じはなく、ストレートにカッコいい曲です。
サビのベースがなんかカッコいいっすね。

歌詞もちょっとキリッとした感じで、一人の人間の生き様を描いているようでもありつつ、スピッツというバンドのスタンスを表しているようでもあり、そう考えると本作の最後に収まっているのも納得な気がします。

もっと自由になって蛾になってオケラになって

小さくて、醜いとされる虫たちに己を重ね合わせ、しかしミスチルみたいにでかくなくてもその分自由やで!と宣言するかのような痛快なフレーズ。また、後にスピッツには珍しく金に関するフレーズもあることから、オケラは無一文って方の意味とのダブルミーニングとも取れます。
「なってなってなって」「飲んで飲んで飲んで」「願望妄想行動」と繰り返しや押韻を多用することで生き急いでいるようなリズム感が出てます。カ行とかガ行とかサ行とか強めの子音が多用されているのもキリッと感。

開拓前の原野 ひとりで身構えてる

という最後のフレーズが、後の『醒めない』とかでの跳躍を思わせます。