偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

SHAME シェイム(2011)


NYのできるビジネスマンのブランドンだが、実は性依存症で、ナンパ、娼婦、会社のパソコンでエロ動画を見ながら自慰行為などあらゆる手段で性欲を抑えようとしていた。
そんなある日、自傷癖がある妹のシシーが彼の家に転がり込んできて......。


マイケル・ファズベンダー演じる主人公のブランドンは仕事が出来てそれなりに良い暮らしをしててイケメンでモテるから遊ぶ相手にも困らない、表面だけ見たら羨ましさしかないような男ですが、セックス依存症のせいで苦しむ姿は痛々しい。当たり前のこと言いますが人は見かけじゃ何か抱えてるか分かんねえなと実感させられます。
なんせことがセックス依存症なので、恥ずかしい。人に相談したってエロい人と思われて終わりだし医者にも行きづらい......と考えてなのでしょうが、主人公はこのことを誰にも言えずに1人で抱え込んでいるから余計に閉塞感があります。愛のためでも快楽のためですらなく奴隷のようにセックスを求めてしまうのが悲しい......。

一方でキャリー・マリガンが演じるブランドンの妹シシーも恋愛依存で自傷癖があって......という、やはり色々抱えてる人で。
なんだけど、彼らが基本的に1人で抱え込んでる映画なので、観客に感情移入させようとする演出もなく、淡々と苦しむ2人を見せられる居心地の悪さのようなものがありました。他人事として見てしまうけど、だからこそなんか消化しきれずに微妙に刺さる感じというか......。
音楽も基本はピアノの曲が多く、そこにシックやブロンディの煌びやかな曲が流れたりするのが全然煌びやかじゃない彼らの現実を際立たせるようで切なかったです。

しかし、終盤で兄妹が言い合うあたりから彼らの感情が画面から溢れてこっちまで滲み出てくる感じがして、そこからの最後の流れでようやくちょっと彼らに寄り添った気持ちで見られました。

題材が題材だし地味で重苦しいしでなかなか人に勧められんし自分でも面白かったとは言い難いですけどなんか印象に残る作品でした。