偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦(2003)


トリアーが尊敬する映画監督ヨルゲン・レスに、レス自身の短編「完全な人間」をリメイクさせる。ただし、リメイクは5本撮らなければならず、毎回違った厳しい条件が課される......。


タイトルからトリアーさんが挑戦するのかと思ってたら、挑戦させる側だった。
しかも相手のレス監督は敬愛する大先輩らしく、そんな相手に無茶苦茶なお題をふっかけたり、出来上がった作品を「撮り直せ」だの「私はあなたに駄作を撮らせたいんですよ」とか滅茶苦茶なことを言うトリアーの意地悪さがめちゃ面白い。
それを受けるレス監督は皮肉を返したりしつつもなんか常に困惑してる感じなのも面白くて、凄い人なんだろうけどなんか変なやつに絡まれて可哀想に思えてしまった......。

そんな2人のバトルな枠部分も面白いんだけど、レス監督が仕上げてくるリメイクも毎回映像がカッコよくて素敵。
私が特に好きなのは1本目のキューバ編。ロケーションの良さはもちろん、12フレームの制約が良い味出してたのと俳優さんたちの顔が良かった。

そして、5本目を観るに至って本作が結局何だったのかのかが一気に分からなくなる構造がすごい。
本作がほとんどヨルゲン・レス監督による作中作なのにトリアー作品であるかのように感じてしまうことの裏返しのようでもある、駄作にして問題作な5本目......。
観てる間は映画監督ってすげーなみたいな感じで分かりづらいところもなく(そもそも「完全な人間」は分かりづらいが)観れてたのに、最後に煙に巻かれる感じが面白かったです。