偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956)


第二次大戦中、ドイツ軍の刑務所に囚われたフランス人のフォンテーヌ中尉は隣人や囚人仲間の助けを得て脱獄を企てるが......。


ロベール・ブレッソン監督によるシリアスな脱獄映画。
BGMも抑えめで、囚人同士の連帯とか嫌な看守とのゴタゴタみたいな分かりやすい人間ドラマも廃されていて、淡々と監獄での日々のルーティーンとその中で徐々に脱獄計画を進めていく様を描いた作品。
そのため一見地味ではあるんだけど、ドラマチックさを削ぎ落とすことでリアルでヒリヒリした緊張感が生まれていて引き込まれてしまいました。
冒頭から手の描写が出てくるように、ピンで手錠を外したり、スプーンで鑿を作って扉を削ったり、手紙をそっと手渡したりするようなシーンの主人公たちの「手」の動きが印象的に映されているのがカッコよかったです。

そして会話も少ないんだけどその分主人公のモノローグがたっぷり入っていて、淡々と事実や心情を述べつつもどこか詩情があるものなので、このモノローグのおかげでだいぶエンタメ的な観やすさも出ていて退屈せずに観られました。

中盤まではかなりミニマルな感じで同じような映像が繰り返されるんですが、それだけに終盤の脱獄シーンが映えていて、息を詰めて見守ってしまいました。
その顛末までだけ描いてすっとFINになる終わり方も潔くて良かった。

わざとらしい説明などなくても、主人公の脱獄への信念と執念を観ているだけで強烈な怒りや「抵抗」を感じさせる、シンプルだからこそ印象的な作品でした。