偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

キラー・ジーンズ(2020)


人気アパレルメーカーCCCが新作のジーンズを開発。その発売前夜、店舗従業員は深夜の売り場作業を行っていた。そんな中、出来心から新作を持ち出して履いてみた従業員がジーンズに食われ、惨劇の幕が開く......。



モノがキラーになる系クソ映画の一つで全然面白くないんだろうけどまぁ一応チェックしておくか......くらいのつもりで観たら、思いのほかちゃんとした作りで楽しめました。

まずB級ホラー映画としてしっかりグロいもんや変なもんを見せてくれるのが好感度高いっす。
技術的な問題からか殺されるシーン自体はしっかり見れないけど、その分装飾的な死体はけっこう気合い入ってて美しい。血もどぴゅどぴゅ出るけどジーンズくんがしっかり舐め取って綺麗にしてくれるので安心ですね(?)。
そんでそのジーンズくんが可愛いんだよね。尻ポケットを目に、胴の穴を口に見立てたキャラ造形が可愛らしく、踊ったり二足歩行したり這いずったりするのもいちいち愛嬌があって良いですね。エンドロールのメイキングも必見。

そんで、ストーリーはというと、まぁ正直中盤まではだるだるで、殺しの場面だけは楽しいけど他の会話とかはわりとタルかったりします。80分くらいしかないのに冗長に感じる部分もあります。
ただ、序盤から仄めかされる消費社会への批判や、表向き綺麗なことを言って実際は金儲けさえできればいい大企業の実態などのテーマは、私自身某大企業の歯車として働いてるので思いのほか刺さりましたね。
そして、ジーンズが人を殺すという馬鹿馬鹿しい設定をそうした社会派なテーマ性と見事に結びつける終盤は最高でした。昨今A級ホラーでは社会的なテーマを持ったものが流行りですが、B級界隈にもそれが波及してきたか......と。しかし馬鹿馬鹿しさと生真面目さのギャップがあまり見たことのない新鮮さになってて面白かったです。
ラストシーンもどうしようもなく皮肉で好きでした。
またこういう映画にありがちな下ネタ(ちんこ食われたりとか)も無くって真剣にやってる感じが良かった。

そんな感じで、まぁ面白いですとは言えないんだけど、予想を裏切る風刺的な作品で思ったより楽しめたのでかなり好きですね。



































序盤からインドの綿花農場のイメージ映像が流れたり、ジーンズくんがボリウッド音楽で踊ったりしてるのもこういうクソ映画のことだからノリでやってるだけだと思ってたらちゃんと伏線になってて、まぁ伏線としてはちゃちいけど意外とちゃんとしてるなってびっくりしました。
店長が凄え嫌なやつなんだけど、彼もまた資本主義社会における大企業からの社員への圧力の被害者と思うと、ざまーみろと思うと同時に憐れにも感じてしまいます。あいつ絶対友達も恋人もおらんだろうし仕事だけが生き甲斐だっただろうから許してあげたい......。
扉開けたら内臓ぶちまけ死体!とか段ボール開けたら生首!みたいなグロ死体描写も良かった。