以前『盗作』というアルバムを聴いて、それもまぁ好きだったけどその時は心を病んでいたのもあってそんなにハマる気力もなかったヨルシカ。
しかし密かに購読しているこちらのブログ
で最新作『幻燈』が文学作品オマージュの曲から成るアルバムだと知り、俄然気になってきて聴いてみたらもう今年の私的ベストであることは確定(スピッツ除く)したくらい最高にハマっちゃったのでこうしてブログに拙い感想を書くことにしました。
いきなり言い訳するのもダサいけどヨルシカは今んとこ本作以外では『盗作』を軽く聴いたくらいのにわかなのでこのバンドの文脈も分からんし、モチーフとなった文学作品もなななんと最後の曲のやつしか読んだことなかったので(もちろん新潮文庫とコラボカバーのを買って、ちまちま読んでいます)変なこと書いてても生暖かい目で見守ってください。
さて、本作ですが、本来は「音楽画集」という形でリリースされているようです。
詳しくはググってほしいんですが、画集にスマホをかざすと完全版(?)の25曲(うち9曲はインスト)が聴けるという作りらしい。
しかしこの配信版ではシングルとして発表された曲を中心にした10曲のみが収録されています。
この画集の方も正直買おうか迷ってはいるんだけど、なんせコンセプトがなんか腑に落ちなくて......(ごめんなさい)。
画集を読み込むという一手間を加えることで音楽により集中してもらう......みたいな意図だと思うんですが、そんなら結局スマホいじってやる形式じゃなくてそれこそレコードとかで出した方が「自分の手で音楽を流す」という実感はあると思うし......。
絵と音楽で一つの作品を表現する、というのは面白いと思うけど、個人的には音楽は音楽主体として聴いちゃうからどうしても絵はジャケ写くらいのオマケとしてしか見られなそう......みたいなのもあって踏ん切りがつかずにいます。
ただ、シンプルに本作の収録曲レベルの曲が、歌モノだけでもあと6曲も追加で入ってるというだけで買わなきゃ聴けないならまぁ買っても......という気持ちにもなるし悩んでます!
なんにしろ画集買ってから25曲の感想をいっぺんに書くのも大変なのでとりあえず配信版10曲分の感想をこの記事では書いていきます。
アルバム全体としては10曲しか入ってない腹八分目感が楽曲の余白を際立たせていて、完全版を聞いてないのに言うのもアレだけどこれでもう完成してるじゃん......という感じ。
どの曲も近年主流のJ POPの曲に比べて音数も少なくガチャガチャしていないので聴きやすいしじわじわとじっくりハマれる耐用年数の長いアルバムだと思います。
ファンには今更だろうけどボーカルのsuisさんの歌声が一曲ごとにガラッと変わるのには驚かされるし、文学作品のエッセンスを取り入れつつ一つの物語として再構成された歌詞もやっぱ凄い。あともうシンプルにメロディが最高。最近はアレンジばっか凝ってるけどメロディがこんなに良い音楽ってあんまない気さえするので癒されました。
近作が『盗作』『創作』だったのに対し、本作ではあえて全曲で過去の文学作品をモチーフにしつつ現代の視点を加えるという二次創作のような形で作られているのも、内容的には前作とは隔絶しつつもバンドの流れとして頷けるのも面白い。なんせ過去のアルバムを聴いてないのでこれからどんどんディグっていきたいと思います!
という感じでまぁ配信版だけ聴いても超名盤です。
以下各曲感想。
1.都落ち
配信版では1曲目のこの曲は歌始まりの穏やかながら切なさを含んだキラーチューン。
早くも遅くもなく、明るくも暗くもなく、激しくも静かでもなく、歌い方も特徴が薄く、全体にめちゃくちゃフラットな印象。なんだけど、なんとなくふと口ずさんでしまうような、すっと入ってくる感じがあって頭にこびりつくんですよね。不思議。
サビの「僕はあぁ〜〜あああぁぁ」の伸ばし方とか、ちょっと和楽器に寄せてるようなバンドのサウンドだったりに、狙った感じのしないサラッとした和テイストがあってオシャレです。
歌詞は「貴方」と別れて「僕」が遠くへ行く様を都落ちに仮託した切ないものですが、曲や歌と相俟って無常を知っていて全て受け入れているような達観も感じられるのが非凡な感じがします。
貴方は水際一人手を振るだけ 今、思い出に僕は都落ち
都離れて舟進む 水は流れて時もまた 僕は貴方の思い出に ただの記憶に
なんとなくですけど、僕は貴方に恋してるけど貴方は他の誰かを好きで、僕のことはどんどん思い出へ、そしてただの記憶へと押し流していってしまっていて、その流されていく貴方の中の僕という存在を「都落ち」としているようなイメージ。
一方でこれは歌詞からは読み解けなくて勝手に思ってることなんですけど、なんか都には都で窮屈さがあってそこから解放される爽やかさみたいなのも8%くらい感じちゃうんですが、これは曲調が穏やかでどこか前向きさもあるからでしょうか。
あと、次の曲で「死ぬほどのことはない」と言ってるので、その印象もあってだと思いますが、都から落ちることの安心みたいなのもどこか感じちゃうんですよね。
2.ブレーメン
これも歌始まりだけど、前の曲の澄んだ歌い方とは変わってどこか投げやりな感じのニュアンスが宿っていて、声の表現力凄えなと思わされます(そしてこの後も全曲歌い方が違うくらいな感じなので畏怖の念すら抱く)。
冒頭の歌詞にも出てくるようにサウンドはレイドバックってのか、ゆったりした心地よい感じで、その中にサビ前のカッコよさとか「あっはっはっは」のとこのつんのめるリズムとかメタなネタのある歌詞とかの遊び心がアクセントになってて楽しい曲です。
特にサビのギターがカッコいいです。
歌詞は現代社会のせかせかした生き苦しさに対するアンサーみたいなニュアンスっすかね。
「まだ時間が惜しいの?」という歌詞があるようにどうしてもタイパ(ってなんや)とか気にしちゃう私たちに「ゆったり音楽聴いて踊りゃええやん」と言ってくる感じは、本作の画集の方のコンセプトにも通じていそう。
精々楽していこうぜ 死ぬほどのことはこの世に無いぜ 明日は何しようか 暇ならわかり合おうぜ
この曲のモチーフである「ブレーメンの音楽師」も殺されそうな動物たちが「死ぬくらいなら上京してバンド組もうぜ!」って言って東京(じゃなくてブレーメン)を目指す道中で生きる道を見つけるお話でした。
この曲はそれ現代社会におけるストレスからの前向きな逃避に置き換えた読み替えみたいな内容になってます。
そして2番のサビで「同じような歌詞だし三番は飛ばしていいよ」と言っておいて、間奏を挟んでから3番で
精々楽していこうぜ 死ぬほど辛いなら逃げ出そうぜ 数年経てばきっと一人も覚えてないよ
と一番ストレートなメッセージを繰り出してくる、捻くれ者の素直さみたいなところが可愛くて好き。
私も仕事が辛くて死にたかった時期があったし、人間関係でもなんでも辛かったら辞めちゃえばいいし切っちゃえばいいんすよ......ってそう簡単にもいかないけど、逃げるという選択肢があるだけで違うよなと思います。優しい。
3.チノカテ
シンプルにメロディが良い曲の揃った本作の中でも、久しぶりに「メロディが美しい」と思わされたのがこの曲。
最近はアレンジとかがカッケェ音楽が増えすぎていてメロディを聴くのを疎かにしてましたが、やっぱポップソングのファンにとってはメロディが1番大事やわな。美メロは正義!
歌い方もそれに合わせてこの曲は優しく繊細な感じで、聴いてて凄いヒーリング効果がありますね。
歌詞は一言で言えば「書を捨てよう町へ出よう」。これ、寺山修司の言葉だと思ってたらジッドの『地の糧』だと知って勉強になりました......無知。
飲みかけのコップの生活感というミクロで身近な情景描写から入って、そこから自然と「花瓶の白い花」に繋げてるけど、この白い花はこの曲の中で重要なモチーフとして比喩的に使われてもいて、具象から抽象への繋ぎ方が綺麗。
花瓶の白い花 優しすぎて枯れたみたいだ 本当に大事だったのに そろそろ変えなければ
花瓶の白い花 いつの間にか枯れたみたいだ
本当に大事だったなら そもそも買わなければ
花瓶の白い花 枯れたことも気付かなかった 本当に大事だったのは 花を変える人なのに
と、3番までの変遷から本当に大事なものに気付いていくという流れも綺麗。
本当は僕らの心は頭にあった 何を間違えたのか、今じゃ文字の中
というところからの、
全部を読み終わったあとはどうか目を開けて この本を捨てよう、町へ出よう
という開放感には前の曲の「死ぬほどつらいなら逃げ出そうぜ」にもどこか通じるところがある気がします。
しかし本を捨てて町へ出ようという前向きな決意の歌でありつつ、
貴方の夜をずっと照らす大きな光はあるんだろうか? それでも行くんだろうか
という別れの歌でもありめちゃくちゃ切ない。
この美メロでこのストレートに泣ける歌詞をやってくるところが、本作の序盤のラスト曲として完璧すぎるし、次の曲からのダークな曲コーナーも映えるってもんですよね。
4.月に吠える
というわけでここからの2曲はダークな曲コーナー。静かでちょっとダウナーで憂いのある曲調がかっこいい。
冷たい感じのリズムが牽引する曲で、冒頭から咳の音ではじまるんだけど、咳とか吐息とか泡が弾けるみたいな音とかが気持ち良くリズムに乗っかっててイキそうになります。サビ前の部分とか特に。
歌い方はまた変わって、低めで緩やかな絶望に囚われたような暗い声。
全体に抑えた歌唱の中で、タイトルの「月に吠えるように」のあたりだけ少しだけ強めに歌われるのがカッコよすぎるんすよね。
あとは不穏なCメロもカッコよすぎる。不穏すぎる。最高すぎる。すぎるって言いすぎる。
歌詞も孤独や鬱屈や惨めさを荒っぽいカッコ良さで描いたもの。
路傍の月に吠える 影一つ町を行く
歌い出しから俯いてふらふらと歩きながら下に向かって吠えている様子が描かれていて曲全体の雰囲気を象徴しています。
「アイスピック」や「硬いペン」といった尖ったものを振り翳しながら、「月」や「スープ」といった丸いものに憧れているようなところが良い。
5.451
急に知らん男が歌い出して「誰!?」と思ってたらn-bunaさんでした。てっきりsuisさんが男の声すら出せるのかと思ってびびった。
原始的なリズムが主体のサウンドに自棄になったみたいな荒っぽい歌い方がカッコよくて、その上に乗ってるギターやピアノはオシャレな感じで抜け感もあるのが素敵。終盤のジャズっぽくなるくだりとかも最高っす。
ほら、集まる人の顔が見える 俺の蒔いた炎の意図を探してる 見ろよ、変な奴らだ そんなに声を荒げて たかが炎一つに熱を上げてる
歌詞の考察をしてしまう私たちを嘲笑うようなサディスティックなところ好きです。
炎上とか、大量創造大量消費への苛立ちとそれでも作って消費してしまうことへの諧謔のようなものまでが炎に巻き上げられて昇っていくような混沌があって無心に踊りたくなってしまいます。
見れば胸の辺りが少し燃えてる 道を行く誰かが声を上げた 「見ろよ、変な男」と笑いながら 指の先で触れた紙が一つ遂に燃えた
というフレーズからは創作を嘲笑われることとそれをある種のモチベーションにして創作をしている様が思われて何も生み出せない私からすると少し羨ましいような気持ちにもなってしまいます。
6.又三郎
ダークなトーンの2曲が続いた後でその憂いや苛立ちを切り裂くようなストレートで疾走感のあるロックチューン。
イントロのギターからしてもうバリクソ爽快!単体で聴いてももちろん気持ちいい曲なんだけど曲順でその気持ちよさが最大限に増幅されていて思わず拳を振り上げてしまう。
歌詞も「月に吠える」の孤独や閉塞、「451」の苛立ちや混乱を全て又三郎が吹き飛ばしてくれるような爽快感があって最高です。
風を待っていたんだ
何もない生活はきっと退屈すぎるから
吹けば青嵐
言葉も飛ばしてしまえ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
こうやって摩耗した感性で無理やりブログを書きながら言うことでもないけど、誰も彼もがなんだかんだと色々言ってるこの世の中で自分の中にもなんだか形の定まらない言葉がうようよと転がってるんだけどそんな鬱陶しさを全部ぶっ飛ばしてもらうためにロック聴いてるようなところがあるのでめっちゃ分かる気がしてしまいます。
それでもその中にある言葉に救われたりもするからね。
言葉が貴方の風だ
7.老人と海
高揚感や疾走感のあるロックチューンでありつつ、儚さや静かな決意のようなものを感じさせる重厚さもあり、又三郎と次の曲以降のバラードゾーンへの橋渡しとしても完璧な曲。
時々一瞬入るシンバルの音と、サビの「まだ向こうへ」の後でそれまで大人しかったベースが一瞬うねうねするとこの高揚感が好きすぎる。
モチーフの『老人と海』をまだ読んでいなくて(ヨルシカカバーで買った!そのうち読みます......)、あらすじとかをざっくり見ただけなんですが、少年と老人が出てくる話らしく、この歌詞はおそらくその少年の視点なのかな、と。
なんせ読んでないので違ってたら恥ずかしいけど、海の話とか老人に語って聞かされていた少年が海に出れなくなった老人に代わって海に出ていく......みたいなイメージでこの歌詞を聞いています。
歌詞の中では「靴」というのが陸地(=既知の場所)に縛り付けるものとして描かれていて、最後に「僕らは今靴を脱ぐ」と、未知の海へ漕ぎ出す決意が仄めかされる構成になっています。
風に乗って 僕の想像力という重力の向こうへ まだ遠くへ まだ遠くへ 海の方へ
想像力というと普通は良い意味で使われがちですが、ここでは想像力すらこの場所に僕を縛り付ける重力として描かれているのが面白いです。ちなみにどーでもいーですが、「いう重力」をずっと「優柔力」だと思っててめっちゃ決断できない人なのかと思ってたごめん。
僕らは今靴を脱ぐ さざなみは足を舐む 貴方の眼は遠くを見る ライオンが戯れるアフリカの砂浜は 海のずっと向こうにある
たぶんだけどアフリカの砂浜というのは貴方(老人)がかつて訪れた場所で、老人はそれを過去として見ていて少年はそこへ向かう未来を思っているという継承を思わせる対比で終わるのがとても美しい。
8.左右盲
ここからの3曲はバラード続き。
個人的にはバラードそんなに好きじゃないのでもう1曲くらい激しいのほしかった気がしちゃうけど、とはいえ「チノカテ」でも書いたようにメロディが抜群に良いので何度も聴いているうちにじわじわと良さが染みてきています。
この曲はアコギ弾き語りのように始まりサビでバンドサウンドが入ってくるという王道バラードなアレンジ。タイトル回収の「右も左も分からぬほどに」のとこのメロディとファルセットの歌声が美しすぎる。他の部分では歌が結構抑えめなだけに、ここで一気にエモくなっちゃう。
モチーフはオスカー・ワイルドの「幸福な王子」。そして、前向性健忘を扱った恋愛映画『今夜、世界からこの恋が消えても』の主題歌らしいです。映画は観てないのでよう分からんけど、記憶を失っていく要素が入ることで、他の曲ほどモチーフ小説の内容に寄っていない独自の内容になっています。
僕の身体から心を少しずつ剥がして 君に渡して その全部をあげるから 剣の柄からルビーを この瞳からサファイアを 鉛の心臓はただ傍に置いて
「僕」は徐々に消えていこうとしていて、その中で君に何かを渡そうとしている、という捧げる愛が「幸福の王子」の自己犠牲に絡めて描かれています。
最後のサビの、
少しでいい 君の世界に少しでいい僕の靴跡を わかるだろうか、君の幸福は 一つじゃないんだ 右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を 君が行く長いこれからを 僕だけは笑わぬことを その一つを教えられたなら
というところで、「君が行く長いこれから」と歌われているのが、そこに僕はもういないことを暗示していて、その後の最後の一節で
何を食べても味がしないんだ 身体が消えてしまったようだ 貴方の心と 私の心が ずっと一つだと思ってたんだ
と、「君」の視点に移って「僕」が消えてしまった後の光景が描かれるのが悲しくて美しい。
9.アルジャーノン
ピアノの伴奏に乗せて透きとおった歌声ではじまり、サビでベース、ドラムとシンセみたいな音が入ってきて静かに、しかし強烈なエモさが爆発する綺麗で切ない曲。その雰囲気はそのまま『アルジャーノンに花束を』の終盤を思わせます。
歌詞を『アルジャーノンに花束を』に寄せて読むと、私は「僕」は手術前のチャーリーで、「貴方」は天才になったチャーリーなのかな、と思いました。
貴方はゆっくりと変わっていく とても小さく 少しずつ膨らむパンを眺めるように 貴方はゆっくりと走っていく 長い迷路の先も恐れないままで
僕らはゆっくりと眠っていく とても長く 頭の真ん中に育っていく大きな木の 根本をゆっくりと歩いていく 長い迷路の先を恐れないように
「パン」が出てくるのが粋ですよね(小説の主人公のチャーリーはパン屋で働いてる)。
頭の中の木はチャーリーの知能のことかな?
この辺は天才になっていくチャーリーを描いているような感じだと思いますが、それに対して
いつかとても追いつけない人に出会うのだろうか いつかとても越えられない壁に竦むのだろうか いつか貴方もそれを諦めてしまうのだろうか
僕らはゆっくりと忘れていく とても小さく 少しずつ崩れる塔を眺めるように
というあたりではどうしても小説の終盤で知能を失っていくチャーリーを思い出して悲しくなります。
しかし老いてどんどん忘れていくことすら見守ってくれるような優しさもある素敵な曲っすね。
10.第一夜
これもピアノと透きとおった歌声が特徴の曲で正直最初の方はやや前の曲とごっちゃになってしまうところがありますが、2番から太鼓の音が入ってきたりして歌詞にも出てくる夏の特別な空気感が出ていてエモい。
画集の方では第二部としてこの第一夜からはじまり、この曲以外はインストで第十夜までが収録されているらしく、そこから思うにこの曲のモチーフは夏目漱石「夢十夜」(の第一夜)のようです。
配信版ではアルバムの締めとなるこの曲。1番から3番までで順に朝、昼、夜にまつわる今はいない「貴方」との暮らしの思い出を反芻しつつ過ごす「貴方」のいない日々の風景がスケッチのように淡々と綴られていきます。
サビは毎回同じ
貴方だけを憶えている 雲の影が流れて往く 言葉だけが溢れている 想い出は夏風、揺られながら
というフレーズで、この単調とも言える繰り返しに夢十夜の第一夜の女を待ち続ける日々が連想されて泣けてきます。
しかし夜のシークエンスが終わると再びまた朝が来て、その最後の最後に
やっと貴方に出逢えた そんな夢を見ました 貴方は僕に笑います ずっと待っていましたと
と来るのがズルい。
このアルバム全体を通しても別離や喪失を歌った曲は多かったし、特に1曲目の「都落ち」であなたの記憶から消えていってお別れになる場面と「貴方だけを憶えている」と繰り返すこの曲の最後の再会とが対になっているのがまた上手いっすよね。
どう考えても元からこの10曲でアルバム作ってるとしか思えないんだけど、画集にはあと15曲入ってるらしい(!)。
うーん、、、あんま気は進まないけどやっぱ買っちゃうか......???