偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

穂村弘『彗星交叉点』感想

『絶叫委員会』の続編となる、「偶然性による結果的ポエム」を蒐集し考察したエッセイ集。


街で偶然耳にしたり目にした言葉やSNSでふと流れてきた言葉の中に詩情を見出し、それを集めた一冊です。

妹が目の前で眠っています。そばつゆに髪の毛を浸して

帯に載ってるのでこれだけ引用しちゃいますが、こんな感じの↑。

前作『絶叫委員会』は2010年刊行でしたが、今作は刊行は2023年だけど中身は2011年〜2016年に書かれたものになっています。
そのせいか、本書では前回のような町で聞いた言葉や看板に書いてあった言葉とか以外に、SNSやメールでの言葉もちょいちょい出てきます。
しかしTwitterなんてのはそもそも冗談を言うための場所なので、Twitterで見かけた面白い言葉というと、そもそもネタっぽいものだったら醒めちゃう気がしますが、そこをちゃんと詩情を含みわざとらしくないのになんか良さがあるものが選ばれていてさすがの選球眼だなと思った。
Tweet系だと例えば「花だと思ったこともない」というエピソードのヒリヒリする感じとか凄い。元のTweetした人が凄いし、それを見つけた穂村さんも凄い。ツイ廃なので私もこういうTweetが出来たらなぁ......と嫉妬を覚えてしまう。

あと、今回は看板の文字とかより町で耳にした会話とかが多かった気がしますが、そういうのって喋ってるその人たちの関係性の中でしか通じない秘密の言葉めいていたりして美しく、それをちらっと覗いちゃうことにすごくときめいてしまいます。
しかし文字には文字にしかない奇妙さがあるのでそっちも好きなんだよな......。

という感じで今回もまぁゆる〜く寝る前とかにちょびっとずつ読んで楽しめました。
というか連載自体はすでにもう1冊分くらい溜まってるはずなので表題に悩んだりしてないでさっさと出して欲しい。

あ、1番好きだったのは「おませ」です。