偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

哭声/コクソン(2016)


とある田舎の村で、村人たちが自分の家族を皆殺しにする事件が多発。下手人は皆、話が通じなくなり身体中に謎の発疹が出る。警官のジョングは、この謎めいた事件に、山奥に住む不気味な日本人が関わっていると踏んで捜査を進めるが......。



2回目の鑑賞。やっぱり怖かったしやっぱり分からなかった......。

舞台となる山の中の鄙びた村のロケーションがまず良くって、西洋式の家と、古民家みたいな家や山奥の小屋が同居している村の風景が適度に日常感と異界感を出していて生活が侵食されていくような恐怖を際立たせています。

そんな良いロケーションで繰り広げられる物語はとても難解で、「なーも分からんちん!」という気持ちではあるんですが、そんでもワケワカランながらに次から次へと変なことが起こりまくりでめちゃくちゃ楽しい!(そして怖い!)んです。
序盤は『CURE』なんかにも通じるサイコスリラーっぽい猟奇事件が主眼になるんですが、そこからアレやアレを取り入れつつ、主人公の状況がどんどん悪くなっていく厭さと怖さを堪能できます。
一方で、シリアスで不穏で恐ろしい映画なのに、時々怖いはずのシーンでめちゃくちゃギャグを挟んできたりする奇妙なバランス感覚も凄い。それはやっぱり主人公のジョングを演じるクァク・ドウォンさんの空回ってて情けない感じの演技が喜劇にも悲劇にも合っているからですよね。

終盤では恐怖も分からなさもどんどん加速していき、分からないまま終わっちゃうんですけど、たぶんそもそも明確な答えはないリドルストーリー的なお話であり、なんとなく分かったような気になっちゃうけど考えますと途端に霧の中に迷い込んで行くような、そういう困惑そのものを楽しむ映画なのかな......という気もします。

あと、謎の日本人の役として抜擢された國村隼が怪演すぎた。悍ましい化け物のようでもあり、異国の地で戸惑うおじさんのようでもある得体の知れなさが凄くて、夢に出そう。

以下ちょっとだけネタバレ。

















































シンプルに「幻覚キノコのせい」だったという現実的な解釈のできる事件に、謎の日本人、祈祷師、白い女という3人の容疑者(神?)が現れることでどんどん撹乱されていく物語。
主人公が無宗教なことを考えると、それぞれ別の神とかそういう存在である三者が主人公を取り合う勧誘合戦だった......みたいな受け取り方をしました。
どの神も信じられなかった男の悲劇を描いたブラックコメディ......と思えば、シリアスな話なのに作中やけにギャグ満載だったのも頷ける気も......。