偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ウェンディ&ルーシー(2008)


職を失ったウェンディは愛犬のルーシーと共にアラスカへ仕事を探しに行く。しかし、道中のオレゴンで車が故障し、修理代を残すためドッグフードを万引きしたところを逮捕されてしまう。



ミシェル・ウィリアムズ主演のケリー・ライカート監督第3作。

粗い質感の映像で描かれるどこにでもありそうな町と青い空の美しさに癒されつつ、内容はやはり行き詰まってて息詰まるような閉塞ロードムービー
スーパーマリオみたいな横移動のカットが多くて壁好きとしてはたまらんかった。
犬が賢そうで可愛いし、覇気がないけど犬への愛情は溢れてる若くて黒髪のミシェル・ウィリアムズさんも良い。
当てもなくぼんやりした希望だけで旅に出たり、ちょっとのお金を浮かせるために万引きして結局よけい酷いことになったりするところにハラハラしつつ、淡々としていながらもそうなってしまうことに説得力があって見ていてつらかった。
姉夫婦に電話するところとか、スーパーの若い店員とのやり取りとか、車の修理屋とか、劇的じゃなくさりげないしんどさのあるシーンがとにかく上手くて、なんかじわじわとダメージを負ってしまいます。そんな中で一回だけ強烈な出来事もあったりして、さらにしんどい。
しかし重くなりすぎることもなくあくまでリアルな温度感で短い期間の出来事を短い時間で切り取り、静かだけど複雑な感情が詰まった結末まで、淡々とヒリヒリと見せてくれる良い映画でした。低予算でも「ああ、映画観たな」という気持ちにさせてくれます。