偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

押見修造『ユウタイノヴァ』(新装版・全2巻)感想

大好きな『悪の華』『ぼくは麻里のなか』の押見修造先生の初期作品。
新装版で全2巻で出てます。

ユウタイノヴァ(1)新装版 (ヤンマガKCスペシャル)

ユウタイノヴァ(1)新装版 (ヤンマガKCスペシャル)

  • 作者:押見 修造
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: コミック


夜な夜な幽体離脱して高校時代の元カノの生活を覗き見していた大学生のハル。
ある日自分と同じように幽体離脱しているという少女まほろと出会って......。


すげえ良かったです。

幽体離脱が出来たら女の子の部屋に行って着替えとかお風呂とか覗くのは男なら当然のことでありまして、映画とかだとなかなかそこまで身も蓋もない描写は珍しいかもしれませんが(だからこそバーホーベン師の『インビジブル』はすごい!)、漫画ならそこのハードルは低い気がしますが、それにしてもその相手が高校時代にセックスできなかった元カノで、そこからあんなことやこんなことを見せつけられるという怒涛のエモ切な童貞リビドー全開の展開はさすが押見修造の面目躍如といったところで。
そんなときに不思議な少女に出会って救われちゃってすぐ好きになっちゃうところまで含めていつかの自分を見ているようで共感しちゃいつつ恥ずかしさも覚えました。

しかし今読むと、ヒロインがクソムシとか言うのとか最終章のあれなんかは『悪の華』だし、幽体状態で溶け合って中に入っちゃうのは『ぼく麻里』だし、この時点で後の代表作に通じるものは色々あったんだなぁと感慨深くもなりました。

ちょっと惜しいかなと思うのは、メインヒロインのまほろさんの魅力が元カノ日比野に勝ててないところなんだけど、それは『悪の華』の中村さんの登場で克服されたと言ってもいいでしょう。

2巻で短く完結して、押見修造らしさが既にがっつり味わえる良作でした。