偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

加門七海『猫怪々』感想



猫に優しい町に引っ越してきた実話怪談作家である著者は、ある日傷付いた子猫を拾って動物病院に連れていく。様々な病気を抱えていた子猫を「のの」と名付け飼うことにした著者だが、以来様々な怪奇現象を体験するようになり......。


猫好きで怪談作家の著者による、異色の子(猫)育て怪奇エッセイ。

著者の猫への愛が溢れていて基本的にはほのぼのしたエッセイなんですけど、子猫のののちゃんの健康状態が悪すぎるのに加えて色々な怪異的なモノが家に出まくるのでほのぼのしてばかりもいられない緊張感もあるし、一難去ってまた一難みたいな感じで面白かったです。
怪異に関しては私に霊感みたいなのが全くないのもあって「これ本当か???」みたいなことも多々ありますが、それが虚実入り乱れた現実と幻想の狭間のような不思議な読み心地を出していて良かったです。

また、猫への愛だけは間違いなくホンモノで、著者の猫バカエピソードに笑いながらも、描かれるののちゃんの可愛さを見ているとバカになってしまうのもおかしくないよな......と思うくらい可愛い。
自分の猫バカが他人から見たら滑稽かもしれないことも自覚しつつ、「うっせえわ」とばかりにののちゃんに全ての愛情を捧げる加門さんが素敵。
私の好きな三津田信三の作品にもよく猫が癒し兼、霊感担当みたいな感じで出てくるので、それにも近い読み心地だったのでまぁ好きですよね。

私は猫を、というか動物を飼ったことないんですが、こうして動物との暮らしを読んでみると犬や猫を家族だと言う人たちの気持ちが分かって勉強になりました。