偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

Mr.ノーバディ(2021)


地味で冴えない中年男のハッチ。ある日家に忍び込んだ泥棒に反撃しなかったことで家族からも失望されてしまう。しかし、ある日路線バスでチンピラたちが女性に絡むのを見てついにキレた彼は、チンピラたちを1人でブチのめすが......。


ナメてた相手が実は殺人マシーンだった系映画、略してナメ殺映画。めっちゃ良かったです。


序盤が結構静かに淡々とした感じで主人公の冴えない日々を描いていき、泥棒に入られるシーンとかも地味なんだけど、バスのシーンから一気にギアチェンジして加速し、一旦加速したらもう加速しっぱなしな感じが最高!
バスのシーン、なんか思ったより主人公が強くないな?と思ったら、女の子を非難させた途端に本気出すとこもカッケェ。
とはいえ本気出してからも最近のハリウッドのアクション映画みたいな無敵っぽいスムーズさはなくて、ちゃんと殴り合ってる感じの重みがあるアクションなのが好きです。後半では車や銃といった道具が使われるんだけど、その使い方の工夫にも思わずニヤリとしちゃいます。
最後のノンストップすぎる長いバトルシーンがもう最高で、でも「殺したと思ったら生き返った」みたいな変な引き伸ばしがなくバチっと決着つけてくれるとこも潔くてかっこいい。

ストーリーもほんとにシンプル。普通の暮らしを望みながらもかつてのバイオレンスな日々を忘れられない主人公が、家族を守るため兼、趣味みたいなもんで1人でマフィアと戦うっていう、ほんとにそんだけ。普段小難しい映画を見て「正義となんぞや」とか考えさせられてるだけに、そういうのすっ飛ばしたわっかりやすい勧善懲悪が気持ち良い!
そんだけなんだけど、主人公ハッチが渋いイケオジなので、オヤジの哀愁とキレキレのカッコよさを両方出してきてなんか深みを感じてしまいます。

そんな感じで、もう、アクション映画ってこういうんでいいんだよ!!的な快作。わりと低予算っぽいけどいらんもん削ぎ落とした潔さとアクションを楽しく見せる工夫でめちゃくちゃ面白くなってんのがかっこいいです。