偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

6才のボクが、大人になるまで。(2014)

6歳の少年メイソンが18歳になるまでを、12年の制作期間をかけて同じ役者で撮り続けた労作。
離婚と再婚を繰り返す母親との関係を軸に、父親や姉ら変わらない家族と、変わりゆく友達、そして初めての恋の甘酸っぱさと苦味などが描かれていきます。


映像は芸術性を排したように簡素で、お話には常に動きはありつつそんなに劇的なことは起こらず、リアルに主人公の成長を見守るような気持ちで観れました。
それでいて、なんつーか、ありがちなドラマチックな出来事がないだけに逆に先が読めない感覚もあったり。描かれるのは映画にはならないような、でも本人にとってはちょっとした一大事だったり大人になってふとした瞬間に思い出すようなことだったりして、そういう「なんか良い」エピソードの選択が上手いと思います。
また同じ俳優が演じ続けるキャラクターたちを観ているうちにじわじわと彼らに愛着を持たされてしまいました。人が変わるとそこで一旦リセットされちゃう気がするので......。
また、撮影期間12年の間の時事問題や音楽などもふんだんに盛り込まれていて作品を彩っています。
全体の流れより一つ一つのエピソードが面白い映画ですが、「完璧な人間なんていない」「思いやりのある人間になるか、自己中のナルシストになるか?」などの名台詞やビートルズの「Black Album」そのまま全体に通底するテーマを表しているように思います。主人公や姉貴はもちろん、周りの大人たちもみんな欠点があり失敗もする。それでも思いやりを持って繋がろうとする大切さを教えてもらえます。
それが結実したようなラストシーンがめちゃ美しい。月並みな言い方ですが、映画は終わっても彼らの人生は終わらないことを感じさせてエモいっすね。

そんな感じで、派手さはないのにとても引き込まれて長い映画だけど一気に観れました。