偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

モンスターズ/地球外生命体(2010)


地球外生命体により国土の半分ほどが危険地帯となったメキシコ。アメリカ人の報道カメラマンのコールダーは、社長の娘サムをアメリカまで送り届けるという任務を与えられ......。



制作費50万ドルという低予算のモンスター映画。
タイトルやオープニングからもうちょいモンスターとドンパチやるSFアクションを想像していたので、モンスター自体あんまり出てこないことに拍子抜け。
しかしそういう映画だと分かってきてからは、本作の地味ながらも味わい深い部分がけっこう好きになりました。

とりあえず、モンスターズというタイトルではありつつ、本作のモンスターは非常事態(戦争なり、災害なり)のメタファーのような存在で、実際に描かれるのは「非常事態に接した一般人の主人公たちが家に帰ろうとする」ということただそれだけ。
しかし主人公2人が変なキャラ立ちはせずに感情移入しやすい普通の人として描かれているのでどうしても「自分だったら」という視点で観させられて、起伏は少ないながらもそれなりに引き込まれました。
カメラマンのコールダーのちょっと露悪的で捻くれてるけど悪いやつじゃない感じとか、社長令嬢のサムの豊かだし婚約者もいるけど満ち足りない感じとかがリアルで良かった(あとサムがめちゃ可愛い)。

テーマとしては戦争や災害に対する態度みたいなもの。カメラマンであるコールダーが「怪物に殺された子供の写真は高く売れる。幸せな子供の写真は0円」みたいなことを言ってたり(通貨、円じゃないだろうが)、非常時に乗じてぼったくる人がいたりと、人間の美しくない(でも普通な)面がじっくり描かれていて面白かったです。

そして、そういうあれこれがあってからの、感傷的とも言えるあのラストがめちゃくちゃ好きで、まぁ正直そこまでは地味すぎてやや退屈なところもあったんだけど、一気に私の中で評価上がりました。終わってみればラブストーリーだったんだなぁ、と。だから最後の最後のオチは要らなかった気はしてしまいますが......。

て感じで、個人的にスペクタクル満載の怪獣映画よりも変わった切り口から描かれるラブストーリーの方が好きだから良かったですが、怪獣映画好きの人は結構期待外れと思うんじゃないかとも言える、まぁ変な映画っすわ。


以下ネタバレ。



















































タコ型エイリアンの交尾というなかなかインパクトある映像自体はB級映画としての面白さでもありつつ、お互いにもう恋をしていながらも帰ったら婚約者がいたりして踏み込めなかった2人がその光景を見て気持ちに正直になるという展開がエモすぎて泣いた。こういう、決まった相手がいるんだけど満足してないところに別の男と出会って特別な体験をして愛してしまう感じのラブストーリーがとにかく好きなので思わぬところからそれが来てブッ刺さった。
最後のオチは要は冒頭に繋がってて、あそこにミサイルが撃ち込まれるというものなんだけどそうすると恋人たちは死んじゃうから、こんだけ感動させといてそんな野暮なことはしないで欲しかった気がしちゃう。なんつーか、ラブストーリーやん!と思ったら急にB級ホラーに戻るみたいな......。まぁでもめちゃ良かった。