偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

サンクスギビング(2023)


感謝祭の日のブラックフライデー。地元の大型スーパーの半額セールでは興奮し暴徒と化した客たちにより死人が出る大惨事が起こる。それから1年、ダイナーの店主の女性が惨殺されたことを皮切りに、スーパーでの惨事に関わる人間たちが次々と殺されていく。スーパー経営者の娘であるジェシカと彼女の高校の友人たちも事件に巻き込まれていき......。


グラインドハウス』のフェイク予告編の中の1編を、予告編を監督したイーライ・ロスが長編化した作品。

予告編は見た覚えがあるもののまさか16年もの時が経ってから長編化されるとは思わず普通にイーライ・ロスの新作として楽しみにしてたんですが、あの予告の長編化だと知ってより楽しみになりながら観に行きました。

予告編は2007年とかに公開されたもので、作中年代は70sだか80sだかそんくらいっぽかったですが、本作は2020s現在が舞台の話になってます。予告に出てくるシーンも一部再現はされてるけど全部出てくるわけじゃなく、正直フェイク予告編だった時の方が面白そうではあり、そういう意味でやや期待外れではあったものの、スラッシャーホラーってこういうんで良いんだよな!という、頭空っぽで楽しめる良作でした。

冒頭の、本筋の殺戮劇の下地となる大型スーパーでの大惨事からして凄かった。
ホットサンドメーカーかなんかを半額で手に入れるためにイラついた人間の群れが開店を待ちきれずにゾンビの如く店を襲撃する様は、笑ったらいけないけど爆笑しました。iPhoneの新作とか出るとこんな感じらしいからなんかその辺の風刺なんすかね。あまりにも馬鹿馬鹿しくて笑うしかないけど、吉野家でのバイト時代にナントカフライデーで牛丼がタダになる日に頭のおかしい客が押し寄せる経験をしたことがあるのでアリエネーとも言えず怖かった。
この導入で今後殺されるのであろう人々が既に殺されてもしゃーないくらいのクソどもとして描かれているので心置きなく惨殺劇を楽しめるのも最高です。

そして本編はテンポよくぽんぽん人が殺されていくし、死に方も一つ一つが印象に残るくらい面白い!特にトランポリンと回転ノコギリは最高でしたね!
あと犯人が殺した奴らを料理してテーブルに並べていくところなんかは『悪魔のいけにえ』とか『誕生日はもうこない』などの往年のホラーを思わせますが、それをInstagramに載せたりすることで不謹慎さを自覚しながら楽しんでいるような感覚になるのがとても良かった。

ミステリーっぽく引っ張った犯人の正体についてはまぁなんとなく怪しそうな奴ではあった、というかまぁ全員怪しいから誰であっても驚かせるのは難しいところだと思うけど、しかし明かされてみてから考えるとあまりにあからさまな伏線があったのに気付かなかったし、そういう綱渡りをしてるとこも遊び心満載でいいっすね。

という感じでかなり面白かったしビジュアルインパクト強い殺戮も観られて大満足ではあるんだけど、ただグラインドハウスの予告編の方がよりエログロたっぷりで面白そうだったのでそれに比べてかなりマイルドになっちゃってる感じで、予告編を踏まえてしまうとやや物足りなさも感じます。特にエロが足りなくて、予告編にあったいちゃついてて殺されるシーンが全部お蔵入りしてるのが残念。
まぁでも楽しかったし映画館で観て良かったわ。

そんで、続編もやるみたいなので楽しみです。最近ホラーもリメイクとかリブートとかばっかだから、新しく殺人鬼キャラクターが誕生すること自体が嬉しい!本作のジョン・カーヴァーはジェイソンみたいな不死身の怪物になるのか、スクリームみたいに毎度犯人が変わる趣向になるのかそれとも......いや、楽しみですね!

一言だけネタバレ↓




















































冒頭でパイかなんか作ってきた保安官に「料理上手ね」みたいに言うシーンが伏線だとは思わなかったよ......。