偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

イット・フォローズ

例によってフィルマークスに書いたのを流用ですが、なんせ支離滅裂な文章になってしまいながらこれ以上どう書けばいいのかまるっきり分からないのでとりあえずそのまま置いときます、という感じ。
推敲したいのはやまやまですけどもう眠いからそのまま載せて私は寝ますよ。





本作は、性交渉によって人から人へ感染、というか、鞍替え?をする悪霊?みたいな何か(= It)に怯える少年少女を描いた青春ホラー。
もっと言えば、ホラーの文法を使って描いた青春映画です。
言ってしまえば、これが「ホラー映画」として消費されて「あんま怖くなかった〜」とか言われてるのに憤りを感じるくらいに、青春映画。



まず、導入が良いです。
何かから逃げる少女の末路。怖いとかグロいとかとは異質の、何か見てはいけないものを見たような禁忌感、畏怖感。これが映画全体のテーマを暗示するようでもあり、単純にホラー映画のオープニングとしても素晴らしいです。
始まりがめちゃ良い映画ってだいたい良いですもんね!


で、本編に入ると、しかし淡々として常にややダレてる感じになるわけです。
しかし、映像が魅力的だから、その気怠さすら刺激的。それは、映像が綺麗ということでもあるし、冒頭から全編を覆う禁忌的な空気感も出ていたり、あるいは青春の甘さと苦さとがリアルタイムで封じ込められたような匂いもして、まぁ便利なお約束の一言で言えば、映像自体がエモい!わけです。。


ホラーとして恐怖が動き出してからも、キメるシーンはバシッとめちゃくちゃ怖いんだけど、一方で毎度姿を変える"それ"にどこか滑稽味もあり、例えば裸のおじさんの姿で出てきたりするのにはぷっと笑っちゃったりもして、上手いと言うよりはなんか情緒不安定にすら思えるメリハリの利かせ方も怖いし、青春的でもあるし、エモでしょ。
それと戦う方法なんかも、それの存在さえなければ完全に青春映画でしかないというか、アメリカン・スリープオーバーでしかないというか、要するにこの監督の作品全部プールでてくるしどんだけプール好きなんだよ青春かよ。
それではここで一曲お聴きください。BaseBallBearで、「Transfer Girl」。


......はい、お聴きいただいたのはプールのことを考えるとき真っ先に思い浮かぶ曲でした。
それではレビューの続きを。


そうやって、ホラー映画としての体裁を整えておきつつ、終盤は完全に青春映画にシフトしていきます。
ここ以降はネタバレなしには語れないのでネタバレ感想に突入しますが、とりあえず観てない人でベボベ好きだったりなんか青春というものへの強い想いや呪いがある人は観てくれ!!
































はい、というわけでネタバレしますけど、"それ"とのツッコミどころ満載なバトルシーンが終わって以降くらいは、一気にそれまで目立たなかった(でも一番感情移入しちゃってた)童貞感の強い少年が前面に出てきます。

もうね、一気に恋愛ものになるわけですけど、この純愛には泣きますよね。切ないんだけど、めっちゃ憧れてもしまう、こんな恋、したい。
ラストシーンは私としてはハッピーエンドと捉えたいですね。



で、"It"とは何か?というのが本作の1番の謎であり見所でもあります。
これ、性病とか色々説があるようですが、私の印象ではこれは「死」と「生」ではないかと思うのです。

と書くと「どっちだよ!?」って感じですが、要は生きるということ自体が死へ向かうことだから、死ぬその時だけではなくて生きること自体にも死の恐怖が纏わり付いてる、という意味での、「人生」というものの怖さ、を描いているのかな、と思いました。

作中では「それは時に知人に時に他人に時に愛する人にも姿を変えるが実体は一つだ」とか言われたりもしてますが、それも人生には色んなことがあるけど結局は死という一つの結末へ向かうものに過ぎない、という意味にも思えます。
あるいは、"それ"が時にはやけに滑稽味を帯びて描かれていたのも、「人生」のメタファーと捉えると納得がいく気がします。


セックスによって"それ"が連鎖していく、というのも象徴的。
セックスとは「愛」という人生の意味とされるものの象徴的な行為でもあり、命を作ることでもあり、命を作るということは一つの死を作ることでもあり......つまりは「生」も「死」も内包するものであります。
だから、セックスによって繋がっていく"それ"というのは、死のことのようでもあり、生の連鎖のことのようでもある。

あるいは、ラストシーンで2人が"それ"のような、あるいは通行人かもしれない人影に追われながらも前に歩いていくところを見ると、命を繋いでいくことへの責任、というのも"それ"なのかな、とも思ったり。

ともあれ、人生についてひとつだけ言えることは死へ向かっているということであり、それは自明のことでありながらも人が新たに作られていくことは愛し合うということの中だけに辛うじて人生の意味があるから......というよりは、人生の意味を見出す余地があるから、なのかなぁと。
そういう何か消極的なというか、「生まれてしまったからにはどうしようもないからせめて」という諦念から入る希望のようなものが、ラストシーンの2人の歩いていく先に見える気がするんです。
それは、青春が終わり、人生が始まる、ということ......。



と、ここまで書いてきて改めて読み返してみると、自分でも何を言ってるのかよく分かんないですね。これを人に理解してくれというのもおこがましいですが、何となくでも伝わればいいかな、と。

まぁ一言で言うと、この映画は人生そのものだ!!!!!



では、最後に私の好きなindigo la Endというバンドの「ココロネ」という曲の歌詞を引用して終わります。

詩のついたメロディー 与えあっても
死のついたメロディー 奏できるまで
多分途切れない悲しい連鎖が 産声を上げたあの子を巻く