偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ヴァンパイア/最期の聖戦(1998)


荒野の一軒家に潜む吸血鬼たちを掃討した吸血鬼ハンターたち。しかしその夜のパーティーに最古で最強の"魔鬼"が現れ仲間たちのほとんどが殺されてしまう。生き残ったジャックとトニー、娼婦のカトリーナは魔鬼から逃れながら反撃の機会を探るが......。



U-NEXTにある観てないカーペンターを観ていってます。

さて、本作は現代を舞台に吸血鬼との戦いを描いたお話でありまして、おどろおどろしい怪奇性よりもバトルアクションに寄せた、でもグロ描写はしっかりあるというなかなか新鮮な吸血鬼映画でした。

冒頭から吸血鬼ハンターの一団が一軒家に潜む吸血鬼たちを掃討する場面から始まります。
ハンターたちが手に持つのは十字架やニンニクではなく巨大な銃器やボウガンのようなもの。吸血鬼にワイヤー付きの矢をぶっ刺して太陽の下に引き摺り出して焼死させるというエグいやり口には正直引くし、だから吸血鬼の中でも強大な力を持つ"魔鬼"に復讐されてもどちらかといえばザマーミロくるいにしか思えないし、その後も徹頭徹尾主人公に共感させないのが凄い。
なんせ主人公は神父を殴り女を餌にする残忍な男で、やられる吸血鬼たちの方がなんだか可哀想なんですよね。

ただ、そんな男にもそうなるに至る過去がある......というのをさらっと仄めかすだけで、全然好きになれないけど憎むことも出来ない絶妙なキャラ造形になっていて、かろうじて彼らの人間ドラマとしても観ることができるのが上手いですよね。
また、主人公は嫌な感じだけど、相棒や娼婦、若い眼鏡の神父さんらは良いキャラなので、主人公と彼らとの関係性に萌えました。最後なんか完全にBLだしなぁ......。

映像もカーペンターらしい色使いで描かれるメキシコあたりの荒野の風景が圧倒的に美しく、吸血鬼という題材だけに夕暮れや日の出といった昼と夜との端境の時間帯の空が映されることが多いのも余計に美しい。

ストーリー展開においても、そんなふうに昼と夜が入れ替わるごとに、昼はハンターたち、夜は吸血鬼が主導権を握る攻守交代が繰り返されるのが面白く、終盤は特にその辺の「ああ、もう陽が沈む......!」みたいなハラハラ感を楽しめました。
そしてB級アクション映画でありつつなんだかやけにエモい結末のせいで良い話だった気がしちゃうのが悔しいです。