偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

背筋『近畿地方のある場所について』感想

カクヨム」に連載されていて各所で話題になっていた作品の書籍化。
妻が気になると言って買ってきたので一緒に読みましたがめちゃくちゃ面白かったし怖かったです!

タイトル通り、近畿地方にあるとある地域にまつわる怪談を集めた、フェイクドキュメンタリーホラーです。
雑誌の記事や、ネットの掲示板のスレ、インタビューのテープ起こしなど、様々な媒体で様々な年代の話が実話系怪談短編集のように......というよりは調査資料の集成のように連ねられていく構成になっていて、めっちゃワクワクします。

世代的に2ちゃんねるの洒落怖スレとかを(まとめサイトでですが......)読んでたので、ああいうネット怪談みたいな空気感もかなり強く感じてどこか懐かしくなりつつもとにかく1話1話が怖い。
得体が知れないんだけどなんかヤベェことだけは分かるぜ!みたいな気持ち悪い話が多くて、寝る前に読んでて正直おトイレに行くのをちょっと諦めちゃったくらい怖かった。

そして、いろんな媒体で別々に語られる怪異が「近畿地方のある場所」に関連している点だけ共通しているので、中心だけは最初から見えていて、読み進めるたびにその輪郭がだんだん見えてくるというちょっとミステリっぽい楽しさもあり、ほんとこの構成が天才だし、これネットで連載されてるのをリアタイで追ってたら凄え楽しかっただろうなと思う。本でまとめて読んですらこんなに面白いんだもんね。

ただ、個人的には最後のアレだけはちょっと好みじゃないというか、『残穢』とかでもそうなんだけど、私の場合フェイクドキュメンタリーホラーでこういう現実を侵食するようなオチをやられるとかえって作り物であることが意識されて一気に怖くなくなってしまうんですよね。
なんだろう、根本的に幽霊とか怪奇現象を信じていないので、フィクションとしてだったら怖がれるけど自分ごとになると「いや、ないない(笑)」と思っちゃうというか......。
その点こないだうち観てた『コワすぎ』シリーズなんかはモロに作り物ですよ感が全開なのが好みだったのかも知れないと本書を読んで気付きました。

とはいえ、結末にもミステリっぽい捻りもあったし作品としては最初から最後まで常に面白かったし超好きです。