偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ファイナル・デッドブリッジ(2011)


会社の研修旅行に向かうバスに乗っていたサムは、吊り橋が崩落して同僚たちを含む大勢が死ぬ惨劇の映像を幻視する。その後、橋の崩落は現実となり、元カノのモリーを連れてバスを降りたサムと、彼を心配したり連れ戻そうとした同僚たちの合計8人だけが助かる。しかし生き残った8人も死の運命によって1人また1人と無惨な死を遂げていき......。


というわけでファイナルデスティネーションシリーズ第5弾にして最終作。

前作「ファイナルデッドサーキット」がまぁ3Dで飛び出すこと以外は散々な出来だったのに対して、本作はまた盛り返した......どころかシリーズでも屈指の素晴らしい出来になってて嬉しくなっちゃいます。まさに有終の美。

本作何が良いかってもう、キャラがちゃんと立ってるんすよね。前作でハードルが一気に地に堕ちたせいもあるかもしれんけど、夢と現実の狭間で苦悩し、恋人にも別れを告げられてしまう主人公のサムが魅力的で感情移入しちゃうし、他のキャラもサムの元カノや親友は常識的ないい奴だし、すぐ死ぬような脇役キャラは変人揃いですぐ死ぬくせにやたらと印象的。やっぱくだらないB級ホラー映画でも最低限のキャラの描写は必要だよなと思い知らされます。

そして、死に方もじりじりと焦らしてくるピタゴラ死によって「絶対こいつ死ぬやろ」と分かっている状況でなかなか死なないという手に汗握るサスペンスが復活。その小道具で死ぬんじゃないのかい、と思わせといて、それが別の使い方で活かされて死ぬ、みたいなズラしもめちゃくちゃ上手い。その上で人体がケーキみたいに脆いので「それでそんなグロいことにならんやろ!」と突っ込みながら爆笑できたりもしてとにかく楽しいんすよね。

また、ストーリー的にも前述の主人公サムと元カノのモリーとの微妙な関係性を描くラブストーリーの側面もありつつ、「他の人間を身代わりにすれば助かる」という新ルールと、だからって罪もない他人をそう簡単に殺せやしない......という葛藤との駆け引きでサスペンスとしての面白さもグッと引き上がっていて、その果てにあるクライマックスのシーンは映像的には地味かもしれませんが状況含めてめっちゃハラハラさせられました。

そして、何と言ってもクライマックスの後のラストが鳥肌モノで、それまでも十分面白かったんだけどこれがあることでさらにさらに最高になってます。今までの積み重ねがあった上で、本作がシリーズ最高傑作と言ってしまっても良いのではないかとすら思いますね。

という感じで、クソすぎた前作が面汚しになったものの、逆に言えばシリーズが5作品あって4作目以外全部面白いという稀有なシリーズだったので普通に凄えと思う。
本作のラストを観てもこれで終わりなんだなとは思うけど、昨今の続編・リブートブームに乗ってまた新たなファイナルデスティネーションを観たいと思ってしまいますよね。