偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

魔女の宅急便(1989)

ジブリ意外と観てない説が浮上してきたので、観てないやつ、観たけど忘れてるやつを観ていこうと思います。第一弾がこちら!

13歳見習い魔女のキキが相棒の黒猫ジジと遠くの街へ修行の旅に出るお話!



これなんで今まで観てなかったんだろうってくらい好きでしたが、魔女が出てくること以外めちゃくちゃ地味で日常的な話なので大人になって観たからこそハマった感じもします。
なんせ、主人公のキキが(13歳にして!)親元を離れて独り立ちする話なので、26歳でようやく実家を出た(倍の歳!)今だからこそ「偉いねぇ〜」という気持ちで観れました。

いそいそと準備をして、両親や友人たちに別れを告げ、不器用に飛び立ってパパからもらったラジオをつけると流れるオープニングテーマ曲の「ルージュの伝言」にもうヤラれちゃいますね。ちょっとオシャレで、でも童心にかえるような「はじまるぜ!」のワクワクもあって、子供の頃家族で金曜9時に集まって金曜ロードショー観てた時のことを思い出しました。

キキがやってくる海のある街の風景がもうめちゃくちゃ綺麗で、「こんなとこ住みてえなぁ」と思っちゃいます。シチリアとかかなぁと思ったんだけど、モデルはクロアチアとかスウェーデンみたいですね。
しかし住みてえな良い街じゃんと思った5秒後には歓迎しないムードを突きつけられて、ここで「うぅ、頑張れ......」と思っちゃったとこから本格的に引き込まれました。
主人公が一人暮らしを始めるためにスーパーでフライパンや食材を買うっていうリアリティも良いっすね。魔女なのに。

その後も大きな事件などは起きずに繊細な心の機微を丁寧に描かれていくのが心地いいです。
オソノさんや絵描きの姐さんはもちろん、出会う人たちがモブに近いキャラも含めてそれぞれ魅力的というか、ちゃんとこの街で生きている感じがするんですよね。例えば「あたしこのパイ嫌いなのよね」の少女がなんであんなことを言っちゃったのかとかを妄想するだけであの一家の平凡な物語が浮かび上がってくるような。
あのパイの子の一言をきっかけにキキが他人との関わり合いということを見つめなおして徐々にメガネに心を開くというか、拒絶はしなくなっていくあたりの流れとかも絶品ですわ。

クライマックスで別に世界を救ったり強大な敵を倒したりしなかったり、本編の終わり方がやたらとあっさりしてるのも好みだし、でもエンドロールでユーミンの曲と一緒に後日談が流れて、映画は終わっても彼らはこの街で生活し続けてるって感じもエモいしもう最高でした。

キキがしょっちゅうパンツ見せるとこだけ観てて気になったんだけど、これは何か意味があるんですよねきっと。未熟さとか純粋さの暗喩でしょうか。
まぁ未熟な少女が一人前になる話なので、そんなとこかと思います。しかしその割にお客様への電話対応とかめちゃくちゃしっかりしてて私より100倍社会人としての常識や責任感があって恥ずかしくなりました......。5歳とかに戻りたい。