偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019)


勉強できるだけが自慢の高校生のエイミーとモリー。いつもニコイチで周りの同級生たちとは距離を取っていたが、遊んでばっかに見えた彼らも自分たちと同程度の大学に受かっていたと知り唖然。私たちの青春ってなんだったのさ!?とばかりに卒業パーティーに繰り出して高校生活最後に一花咲かせようと画策するも、他に友達いないせいでパーティーの会場が分からず......。



俳優のオリヴィア・ワイルド氏の初監督作品。

昨今の「ポリコレのせいで映画がつまらなくなる」という言説に真っ向から挑むように、多様性に配慮しなるべく誰も傷付けないようにしながら王道のおバカな青春コメディを作ってやんぜ!という野心作。

キャラクターたちは多様性に溢れ、ルッキズムに抗うように主人公たちはわざとらしい性的魅力を放たず、下ネタたっぷりなのに差別的なジョークは排されていて、意地悪な子たちも性格についてはディスるけど外見とか属性を貶めたりしないし、優しい世界。
なんだけど、ちゃんと面白いんですよね。
なんだけどっつーかまぁ、やっぱ差別的なギャグとかって別に面白くもないし、ましてや楽しくなんてないっすもんね。
その点本作はその優しさ自体が楽しさになっててすげえ心地良かったです。

夜の町を徘徊してパーティー会場を探して歩くのにワクワクし、違うパーティーに寄り道するのもまた楽しい。その過程で色んな濃い人たちに出会うのも楽しい。ジャレッドとジジが最高だし先生たちも良い。
そして辿り着いたパーティーでのキラキラと切なさがもう、こっちもおっちゃんなのでキツいっすわ。恋と友情。最高。
そっからのわちゃわちゃした展開、クライマックスの盛り上がりや次の場所へ進んでいく前向きさもありつつ、高校生活という一つの大きな時代が終わってしまう寂しさとなんか実感湧かない感じまで追体験させてくれて、うわ〜エモい〜!ってなる。まぁ私は高校生活酷いもんでしたけど、そんでも部活とか楽しいこともあったんであんな感じの寂しさはありました確かに。懐かしノスタルジー

て感じで青春の煌めきと陰キャ側の自意識とちょうどいい下ネタと世界への優しい眼差しとが全部めちゃ好みだったのですごい好きです。はい。