偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

根本尚『人形紳士 少女探偵・火脚葉月最後の事件』感想

フォロワーさんが褒めてたので読んでみました。

『怪奇探偵・写楽炎』のシリーズでミステリ界隈で話題になっていた著者の単発のミステリ漫画。
本作はネームの状態のため「販売」は出来ませんということでKindleにて無料配信されている作品。ですが、まぁ絵は確かに下絵なんだけど内容はとんでもなく良かった!まぁシンプルに「どタイプ」ってのもあるんだけど、今まで読んだミステリの中でもトップクラスくらい好きでした。
さすがにこれを無料で読めちゃうのは著者に失礼だと思い『写楽炎』をまとめ買いしちゃったくらい好き。

なんせ、タイトルからして「人形紳士。私の好きな言葉です」「少女探偵。私の好きな言葉です」「最後の事件。私の好きな言葉です」と3メフィラスをキメてしまうくらい好きそう〜な感じでワクワク。
ノスタルジーとエモさに満ちた青春ミステリなんやろうな、と期待して読んだがまさにその通り!な内容で、14歳の夏にあの河原に起き忘れてきた甘酸っぱくてほろ苦い何かが15年の時を経て私を襲った!!!

そんなことはまぁどーでもいいんですが、そんな感じで青春時代の恋の思い出を呼び戻されるようなエモい青春ミステリでした。


時代は80年代、写真館の息子でカメラオタクの高校2年生・光谷太陽は不良に絡まれているところを1学年下の少女探偵・火脚葉月に助けられる。
その縁から彼女の助手となった太陽は、彼女とともにアリバイ写真事件や人間水中花事件など様々な事件を解決していくが、やがて彼女の「最後の事件」となる人形紳士事件が起こり......。


さて、本作ですが、まず少女探偵・火脚葉月ちゃんのキャラクターがめちゃくちゃ魅力的。
年下だけど賢くて自分を引っ張っていってくれるけど時に弱さも見せてくれてあと顔が可愛いという俺の妄想をそのまま具現化したのか!?と思うようないっそ清々しいくらいオタクの男が好きなキャラ造形になってて常にきゅんきゅんしてしまっていました......。
そんな彼女とオタクだけどやる時はやる、これも俺の妄想の中の俺を具現化したかのような主人公太陽くんとのラブコメ的なアレコレにもうむずむずきゅんきゅんが止まらんでしょ。

そんでミステリとしてもいろいろと私の大好きなやつでしたね。
まず前座的に語られる「人間水中花」事件は、探偵小説の中でしかあり得ない荒唐無稽でコスパ悪すぎやろみたいな奇抜トリック(あと怪人コスプレ)が盛り込まれていて、リアリズムなんざどーでもいい私はこーゆーのが読みたかったんや!!!と、前座ですがすでに拍手喝采してしまいました。
そして、メインのエピソードである「人形紳士」事件はマジでもう、最高......。
真相の意外性とそれを支える膨大な伏線、そして物語としてのエモさとミステリとしての驚きの融合......と、好きな要素しかない......。

という感じで、好みドンピシャだったしそうじゃなくてもよく出来た作品だったのでみんな読んでくれよな!Kindleで無料だし!
私はもう完全に葉月ちゃんのこと好きになっちゃったので、読み終わった時のロスが酷かったわ......。