偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

澤村伊智『予言の島』感想

『ぼぎわんが、来る』でお馴染みの著者によるミステリホラー長編。

これ、ミステリ界隈で話題になっていたのでかなり期待しちゃったんですが、結果的には8割くらいは期待通りだけど手放しで褒められないところもあり......という感じ。

まず、帯文とかでもおもっくそ煽ってるから言っちゃっていいと思うけど、ラストのどんでん返しは身構えていても驚かされました。
ミステリを読み慣れてくるとどうしても驚き慣れてしまって多少のことでは動じなくなってしまうものですが、本作の結末はむしろ「多少のこと」とすら言っていいようなことなのにこれだけ驚かされてしまうから凄いっすよね。
それはもうひとえに演出の巧さと、何としても読者を驚かせてやろうという気概のためだと思います。

結末のことばかり語ってしまうのはミステリファンの悪い癖ですが、もちろん結末に至るまでのストーリーも面白かったです。
予言の島という舞台設定に始まり、そこそこ意外な最初の死者で一気に引き込み、アラフォー独身の主人公の恋愛に対して積極的になれないけど惹かれつつある......みたいなラブストーリー未満くらいのやり取りも良いっす。
また脇役たちも魅力的だったり、怨霊から逃げるサバイバル要素が入ってきたり、とっちらかっているように見えて物語全体が一つのテーマでまとまっていたりと、お話としても面白かったです。

......んですけど、手放しで褒められないってのが、オチから逆算して作ってる感じがし過ぎるところで。
もちろん、ミステリ、特に意外な結末のものなんかは結末から逆算して設定を作ったり伏線を張ったりするものではあるんでしょうが、それにしても(ネタバレ→)ダミーの癒着母子なんかはわざとらしすぎる......というかむしろ要らなかったんじゃないかと思ってしまいます。

あと、民俗学ミステリファンを揶揄するような感じもちょっと鼻につきましたね。
詳しくはないけどディスカバージャパンて言葉くらいは知っとるしその上でファンタジーとして楽しんでるんだから放っといてよと思います。
このへん難しいところで、ミステリファンってマゾなところがあるので作品の中でディスられること自体は好きだったりするけど、わざわざ話の流れを遮ってディスカバージャパンとかまで持ち出してまでやられると鬱陶しいというか。
その割に本作はなんかちょっとノリが軽めで、まずは三津田京極の重厚感出してから言ってくれやみたいな。

すみません、こんなに悪口書くつもりじゃなかったんですけど、でもその辺のもにゃったのを抜きにすればめちゃくちゃ面白かったし好きです。オススメ!(雑まとめ)