八木剛士の通う高校の校庭で、女生徒が首を吊っているのが発見された。足跡の密室の状況から自殺と見られたが......。
一方、松浦純菜は、町で頻発する火事の現場に必ず居合わせる南部という少年を追っていた......。
はい、八木剛士シリーズ第2弾です。
まず、本作はミステリとしてとても面白かったです。
新キャラの南部くんの能力によって特殊設定ミステリのようにもなってて、その絡め方や最後のオチなんかなかなか衝撃的でした。
自殺説が濃厚な首吊りに連続放火事件という、微妙に捉え所のない謎がこう収束するとは。驚かされますよそりゃ。
そして、このシリーズの最大の見どころであるらしい剛士のうだうだ鬱屈語りもまた良かった......。
今作を読み終えて改めて思ったのは、あまりに衝撃的な体験をしたために人間の領域を超えてしまったような安藤直樹に比べると、八木剛士はあくまでも陰キャあるある的に感情移入しながら読める主人公像だということ。
だから、安藤直樹シリーズのようなぶっ飛んだ衝撃ではなく、昔を思い出して一緒に怒ったり泣いたり出来るような等身大に刺さるシリーズになってると思います。
で、今作では主に南部への嫉妬と純菜のパンツへの執着に筆が費やされていて、これがもう笑える。いや八木くんからしたら笑い事じゃないけど......みんながシリアスな話をしてる時もひとり純菜のパンツのことばかりを考えてしまう。八木くん、非常にわかりみが強くて良いですね......。
一方で、もう1人の視点キャラの語りでもまた、いじめられて引きこもるに至る過程が描かれていてつらいです。彼も剛士も2人ともいじめられてるからつらさも2倍なんです。
そんな彼が家を出られるのかどうかというのも本書のもう一つの見所になってて、結末はなかなかエグくもエモかったです......。
そんな感じで、新キャラが登場してシリーズとしての行く先が気になるとともに1冊のミステリとしても面白い傑作でした。