偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

辻村深月『本日は大安なり』感想


11月22日、日曜日、大安。
結婚式場として国内でも有数の人気を誇るホテル・アールマティではこの日、4組の結婚式が予定されていた。
しかし、それぞれのカップルや、プランナーの山井はそれぞれに問題を抱えていて......。

ホテルを舞台に"グランドホテル形式"で描かれる、結婚式💒にまつわる群像劇。

多数の登場人物の視点が短くパッパと切り替わっていく構成で、序盤こそ「人がいっぱいいて覚えれないよ〜🥺」と思ってたけどみんなキャラが濃くて普通に覚えられるのがさすが......。なんせ4組のカップルとその親類や関係者とホテル側のウェディングプランナーたち......という大人数の物語ですからね。なのに読みやすくて凄い!

大安で「いい夫婦の日」という最高の結婚式日和の1日を描きつつ、序盤からどのキャラクターも色々と問題を抱えているようで、不穏な空気しか流れません。
双子👭の姉を持つ新婦は、近すぎる故の姉への愛憎を抱えながら幼少期からの半生を振り返ります。
小学2年生の少年は、式に臨む大好きな叔母の結婚相手に危惧を抱き、その結婚をやめさせたいと願い、若きやり手プランナーの山井は史上最悪の客であるワガママな新婦に翻弄されます。
そして、浮気性のクズ男は、500万円💴も掛かる結婚式を中止させようと暗躍し......。
......という感じで、ワケありだらけの式の当日がタイムテーブルに沿って同時進行で描かれるので、あっちの話も気になるけどこっちもどうなっちゃうの〜⁉️みたいなスリルが常にあって一瞬たりとも飽きさせません。
連作短編集にしても成立しそうな話ではありますが、このリアルタイム⏰感溢れる構成が結婚式の日のバタバタを感じさせてめちゃくちゃ上手いと思います。
そして、「式の当日」の光景を先に描きながら、序盤から少しずつ小出しに彼らの過去や思惑が明かされていく作りの、常にどんでん返しが起こり続けているミステリーでもあるのが超贅沢‼️

そして、最後まで読むと、なんだかんだ結婚式って良いもんなのかもなぁ、と思わされてしまいます。
私自身は「1日で年収くらい吹っ飛ぶのはなぁ......」と結婚式はしなかったしそれは後悔してないけど、ちょっと良いなぁと思ってしまう。
心のダークサイドも描きつつ、最終的には大安を冠するに相応しい良い話だった。
ただ、私は心が狭いのでアイツのあの結末はちょっと許せねえ......とは思ってしまうな......。