偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

北大路公子『ぐうたら旅日記』感想

好きすぎて一気に読んじゃうともったいないから、たまにしか読まなすぎて本当に好きなの?と疑われてしまいそうな北大路公子、通称ケメコちゃんによる、タイトル通りの旅行エッセイ。


徹頭徹尾ゆる〜い本です。
まず3部構成になってるんだけど、第一部が恐山・知床旅行記、第三部が積丹ウニ三昧のところ、その間に挟まった第二部が何かの企画で書いた三題話のショートストーリーという、とりあえずあったから入れときましたみたいな構成なのにまず笑います。

旅行記の内容はというと、いきなり「旅はめんどくさいから嫌い」と豪語しておいてからの、旅の行程ほぼ他人任せだし、旅先でも食って飲んで寝てと家でやってることとほとんど変わらなくてめちゃくちゃ笑いました。
ツアーの参加者(友人)たちも類は友をなんとやらでキャラの濃い面々ばかり。でも人数が多いからあんまり掘り下げられない人もいてかわいそう......。
恐山ではちゃんとイタコに会ったりもするんだけど、そこのくだりもゆるすぎて全然イタコって感じがしない(?)です。
あとウニツアーはめちゃくちゃ羨ましい!
私もウニ好きなつもりだけど、こんなに食えねえ気しかしない。というかバフンウニとムラサキウニってこんなに値段違うんですか?というかこんなに値段が違うことってあるんですか?誤植じゃないよね?ってくらい違ってびっくりしました。安いムラサキウニでいいから一面ウニの丼食べたい......。

しれっと差し込まれているショートストーリーも良かったです。
この人のことは完全にエッセイストの変なおばちゃんだと思ってましたが、お話も書けるんですよね。
このショートストーリーの方も、三題噺だから......だけではなさそうな緩さなんですが、シュールな発想の飛躍によって繰り出される奇妙なギャグが心地よくてクセになります。
児玉清さん、懐かしい......。日曜日の昼を思い出して切なくなりました。

そしてもちろんあとがきまで面白さ満載。というかなんならあとがきが1番笑った。そして奥付の手前の初出欄にまでぎっちりと笑いが仕込まれてるあたりのサービス精神に、実はめちゃくちゃ気遣いの出来る人なのでは......とキャラが壊れるようなことも思ってしまいます。

そんな感じで、めっちゃ面白かったです。たまにこの人の本読むと幸せな気持ちになれて良いっすね。