偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

地獄の犬(さけび)(1978)

『地獄の使者デビル・ドッグ』という邦題もあるみたいですが、U-NEXTでは『地獄の犬(さけび)』となっていて、(さけび)が気になってつい観てしまいました。

地獄の犬 [DVD]

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  • リチャード・クレンナ
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カルト教団(?)的なものの儀式によって1000年間封じられていた悪魔が乗り移った雌犬。その雌犬が産んだ仔犬を引き取った家族に悲劇が降りかかるアニマルオカルトホラー。

なんつーか、全く期待していなかっただけに意外と手堅い作りになっていて、地味でオーソドックスではあれどしっかり楽しんで観られるクオリティになってて良かったです。
両親と兄妹の家族のパパが主人公で、家族が犬の魔力で少しずつおかしくなっていき、周りにも「犬がやばい」とか言ってももちろん信じてもらえない......という王道サスペンス展開がじわじわと精神を削ってきます。
......なんだけど、なんせ悪の根源が犬でして、可愛いワンちゃんがベロをはっはっしながら座ってたり夜の道路を走ってたりするだけの映像にホラーっぽいBGMを付けることで無理やり怖い感じにしてる力技の演出が良い意味で脱力モノで、嫌な話なのになんか微笑ましいという不思議な見心地がありました。
基本的にグロいシーンは一切見せず、犬の目が光るくらいしか怖いところはないんだけどストーリー展開や演出の上手さ......というかやっぱり「手堅さ」と呼びたくなるものによってそれなりにハラハラするし飽きずに観られるのがすごい。
そして、終盤はなんだか急にはっちゃけたみたいなB級感を出してきて可愛らしいです。チープさに笑っちゃうけど、それまでが抑えめだっただけに落差でより面白い......。

そして、ホラーなんだけど全体に父親の哀愁みたいなのが漂っていて、自分が仕事で家にいない間に家族が自分には分からない話題で盛り上がってたりするのなんかリアルだし、明らかにイカれた家族とご近所さんとの板挟みになるところとかもつらくて、なんかうちのオトンのこと毛嫌いしててごめんみたいな気分になった......。

打ち切り漫画みたいなラストも味わい深くて良かったし、休みの日の朝にゴロゴロしながら見るにはうってつけの意外な良作でした。