偽物の映画館

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吉富昭仁『地球の放課後』(全6巻)漫画感想文

終末SFミステリー×ハーレムラブコメ

謎めいた不穏さとほのぼのエッチさの融合による奇妙な違和感がクセになる漫画でした。


地球の放課後(1) (チャンピオンREDコミックス)

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地球の放課後 コミック 全6巻完結セット(チャンピオンREDコミックス)

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2年前、突如世界各地に現れた謎の生命体(現象?)・ファントム。
奴らは次々に地球上から人間を消していき、生き残ったのは正史、早苗、八重子、杏南という4人の少年少女だけだった。
しかし、生き残りの4人は誰もいない世界で"地球の放課後"とも呼ぶべき時間を楽しんでいた......。



とにかく設定の勝利ですよね。

......正直、個人的にはこういうハーレムものラブコメってあんま好きじゃないんす。
男の欲望によって作られたような美少女も鼻につくし、それに対して男の欲望から解放されたような主人公のキャラはもっと鼻につくし......じゃあなんで読んだんだという感じですが、でも面白かったです。

なんせ、地球には彼らしかいないわけですから、最初は多少鼻につこうが、読んでるうちに愛着が湧いてきちゃうんですよね。

真面目でおとなしい黒髪眼鏡女子だけど眼鏡外してもまた可愛い早苗ちゃん、対照的に明るい髪で活発でえっちなことばっか考えてる八重子ちゃん、そして妹もしくはマスコットキャラ的なアホの杏南ちゃんと、三者三様の女の子のキャラクターはやっぱり魅力的。
特に、私は八重子ちゃん推しなので彼女が普段は明るくえっちなことばっか言いながらも実は正史への純な恋心を秘めているのには萌えたし正史殺すって思った。

そんな彼らが毎話毎話、誰もいない地球で新しい遊びをするっていうゆるやかな日常が描かれるのですが、なんせ終末世界なのでストーリーのそこここにふと不穏な空気が漂ったりしつつ終わりの予感を孕んだ"放課後"が続いていく......これが凄く良い。
そもそも、地球が終わろうが終わるまいが、青春は終わるものですから。青春を喪った我々にとってこの作品の世界観は、戻りたくてでも戻れない心の故郷なのです......。


そして、終盤では"世界に何が起きたのか?"の謎解きももちろんあり。
まぁこの設定からなんとなーくそういうことじゃないかなとは予想できちゃいますが、そんでもわざとらしいほどにあれこれと散りばめられていた謎が一気に解かれる様には解決編のカタルシスがしっかりあって、その先にある永遠のようで一瞬だった"放課後"への感傷にほろりとしてしまいました。


そんなわけで、ややハマりきれない部分もありつつ、短いのにどっぷり満足出来て、でも腹八分目な寂しさも味わえるなかなか素敵な作品でした。