偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

胸騒ぎのシチリア(2015)


声を失ったロックスターのマリアンは、静養のため恋人のポールとシチリアに滞在していた。そこへ、マリアンの元カレで音楽プロデューサーのハリーと、その娘ペンが訪れることで、4人の関係は緊張状態を増していき、やがてある事件が起きる......。



君の名前で僕を呼んで』の一作前に当たる、ルカ・グァダニーノ監督のラブサスペンス。

ストーリーは正直かなりわけわかんないんだけど、そんなことより役者を含めた映像の美しさに酔いしれつつ、タイトルにある「胸騒ぎ」の雰囲気を味わう映画、かな。

とにかくシチリアの海とか空とか緑とか街の建物の壁の色とかまで風景が全てバリクソ綺麗で、ここに住みたい......いや、こんな美しい場所には住めねえ......いやでも2ヶ月くらい滞在したい......みたいな行ってみたさに襲われて2時間のショートトリップをしたような気持ちにさせてもらえました。

そして俳優陣もみんな濃厚で最高だった。
主演のティルダ・スウィントンはほぼ喋れない役ながら、いやだからこそ圧倒的な存在感を放っていて凄い。唯一無二。なんでその服なん??みたいなファッションとかがいちいち似合ってて、なんでああいうの着こなせるんだ??って感じ。そしてスターだった頃のステージに上がってる映像は完全にデヴィッド・ボウイでわろた。ボウイの何かのMVにも出てたよなそういえば。
サスペリア』にも出てたダコタ・ジョンソンさんはめちゃえっちだった。なんでその格好で出歩くん??みたいなファッションで常に裸よりえろいので困っちゃいます。しかし大人びたところが背伸びして演じてるようで痛々しくもある感じが良い......。
そして、レイフ・ファインズは「名前を呼んではいけないあの人」のイメージしかなかったから素顔こんなんなんだ〜とびっくりしたけど、めちゃくちゃウザいのにもびっくりした。こいつ殺人鬼にやられてくれないかな〜無理だよな〜そういう映画じゃないもんな〜ともやもやイライラさせられました。
そんなそれぞれ濃い面々の中で、マティアス・スーナールツさん演じる主人公のポールは1番普通なんだけど、そのためかえって何考えてるのか分からない感じもありますね。
そんな濃い4人の間で、もう全員が全員に強めの矢印飛ばしてるような濃密な人間関係が醸成されていくスリリングさが面白かったです。

ただ、中盤までそういう感じの込み入って繊細な人間ドラマだったところからの終盤の超展開は謎で、意外性という点では面白いけど、やっぱりなんでそうなるん??という感じだしそのままの雰囲気で最後まで行ってほしかった気はしちゃいます。演出も急に変な風になるから笑っちゃいましたけどね。
しかし最後はなんだかんだほろ苦い一夏の思い出......みたいな感じでいい感じの余韻を残して終わるのがズルいです。
そんな感じでなんとも掴みどころのないお話でしたが、美しい映像と豪華キャストの掛け合いだけでも楽しく観ることができました。