偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

市民ケーン(1941)


新聞王として君臨した男ケーンが死んだ。記者は彼が死の間際に遺した「バラのつぼみ」という言葉の意味を探るため、ケーンと関わりの深かった人々を訪ねてその生涯を紐解いていくが......。

市民ケーン(字幕版)

市民ケーン(字幕版)

  • オ-ソン・ウエルス
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映画史上でも最大級の重要作みたいな位置付けの本作ですが、そのせいで期待しすぎてちょっと肩透かしな気はしちゃいました。まぁそれなりにちゃんと面白かったけど......。

冒頭でニュース映画の形式でケーンという男の生涯の上澄みの部分をダイジェストで流し、そこから関係者へのインタビューでその裏にあったドラマを浮かび上がらせていく構成が見事。
演説のシーンとか、その後の修羅場シーンとかが印象的でした。

しかし、主人公ケーンがシンプルに嫌な奴で、ラストシーン以外全然好きになれる要素がなさすぎてそんな男の栄枯盛衰譚を見せられてもわりとどーでもよく感じてしまったのが痛かった。
あと撮影技法が凄いらしいんだけど、今観ると別にそう凄い感じはしない。逆に言えばそれだけ現代の映画の礎みたいになってるってことなんだろうけど。
物語のキーを握る「バラのつぼみ」という言葉も本作全体を牽引する引きとしては弱く感じてしまいました。もちろん、その意味がああいう形で明かされる演出は粋で素晴らしいと思うけど......。

という感じで、正直今観てそんなおもろいとは思えなかったけど、しかしこれが26歳の時のデビュー作だと知るとその才能の恐ろしさは感じました。