偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ボーイ・ミーツ・ガール(1983)

レオス・カラックス監督23歳の頃の長編デビュー作で、アレックス3部作の1作目。

恋人を親友に寝取られた青年アレックスが夜の街をぷらぷらしながら恋人とうまくいってない女性ミレーユと出会うお話。



83年の作品ですがあえてのモノクロで撮られた映像が美しくかっちょええ。
物語というよりは詩のように断片的なイメージが連なっている映画で、一つ一つの画がすげえ良いんすよね。
オープニングからしてバチっとキマってる......かと思いきや、それが本筋とはあんま関係ないのもクールだし、夜の河沿いの風景、暗くて狭い部屋、隠された地図、ピンボールの裏側、回るカップル、踊るミレーユ、手話の老人、欠けたカップなど、なんか分かんないけど強く印象に残る場面がいっぱいあって観てるだけで楽しいです。

そういう暗喩っぽい表現やら引用やら詩的なセリフやらのおかげで難解な印象もあるけど、すげえざっくり言ってしまえばタイトルの通りただ「恋」を描いてるだけの作品でもある......んだと思います。

恋とは終わるもの、失うものであって、冒頭の本筋とは関係ないおばちゃんからして娘を連れて夫から逃げていたり、主役の2人も元の恋人と別れたりうまくいってなかったりするし、パーティーの場面での宇宙飛行士や欠けたカップのおばちゃんのエピソードからも喪失の匂いが強く漂います(関係ないけど私の好きなギリシャラブというバンドの「テレパシーでランデブー」という曲の元ネタがここだったと知って嬉しくなりました)。

そして、恋とは独りよがりのものでもある。
主人公のアレックスは自分でも言ってる通り孤独な青年。彼が夜の街を歩き回ってるだけの話なんだけど、彼、あんま誰とも会話しなくてとにかく1人でモノローグぶつぶつ言ってるだけなんすよね。
そんな彼が同じく孤独を抱えるミレーユと出会うわけですが、彼女に対しても独りよがりに自分語りをぶつけてるだけで。
なんつーか、自分に似たところのある可愛い女の子に自分を投影して愛でてるみたいな感じっすよね。でも「恋は盲目」なんて言うように、恋をすればするほど周りのことも相手のことも見えなくなって自分のことしか考えられなくなってしまうもので(意味が違う)、そういう青い恋の失敗談として観ると身につまされる作品であります。

という感じで、デビュー作らしく凝りすぎなほど凝った映像はめちゃくちゃ良くて、ストーリーも良かったけど大学の頃とかの私にとっての恋の季節に観てたらもっとぶっ刺さっただろうなと思うと惜しいですね。でもかなり好きです。