偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

砂塵(1939)


治安の悪い町で保安官が悪党たちに殺される。悪徳市長は飲んだくれの初老の男を新たな保安官に任命するが、新保安官は心を入れ替えて酒を断ち、友人だった勇敢な保安官デストリーの息子を保安官助手にする。しかしデストリー(息子)は法と正義だけを武器に拳銃も持たない便りなさげな男で......。


ジェームズ・シュチュワートとマレーネ・ディートリヒ主演の、ユーモアを交えつつも正義を貫くかっこよさが描かれた西部劇。

なんといっても主役2人をはじめ、キャラクターたちがめちゃくちゃ魅力的で、それだけでずっと観ていたくなるくらい。
ジェームズ・スチュワート演じるデストリーは、町に到着した瞬間から「銃持ってないんだってよあ〜ひゃっひゃっ!!!」みたいな感じに町民たちから馬鹿にされるんだけど、父親が殺された時の悲しみから非暴力の信念を持つようになった男。飄々としてる彼の内に秘めた正義感と実はスゴイところが見えてきてからは一気に彼を好きになって応援し始めてしまいます。『スミス都へ行く』でもこういうキャラでしたが、やっぱ合いますね。
一方のディートリヒ演じる歌姫フレンチーは妖艶な悪女でありながら純情な乙女のようでもあるキャラで、まぁ私も男なんで好きにならないはずもなく......。歌うシーンの色っぽさと暴れるシーンの可愛さでもうノックアウトされちゃったよね。
他にもいかにも情けない味方陣営の酔いどれ保安官やズボン男、いかにも悪そうな悪党や悪徳市長などいちいちキャラ立ちの強い面々が繰り広げる騒動が楽しすぎるんですよね。

筋立て自体は主人公たちが町の悪党たちをやっつけようとするシンプルな勧善懲悪ものなんだけど、90分くらいで短くまとまってるのでダレる前に腹八分目くらいで終わっちゃうのも良いですね。
ただ、クライマックスには若干納得いかないというか、結局そうなるんかーい、みたいな気持ちにはなってしまいます。

あと、砂塵というタイトルの意味がいまいちピンと来なかった。原題はもっとシンプルなのになぜ抽象的なオシャレタイトルにしたのか......。