偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

エンジェル、見えない恋人

ルイーズという女性は精神病院の中で息子のエンジェルを出産するが、彼は先天性の透明人間だった。思春期になったエンジェルは、マドレーヌという盲目の少女と恋に落ちるが......。

エンジェル 見えない恋人 [DVD]

エンジェル 見えない恋人 [DVD]


これはよかった!
主人公視点の青春ラブストーリーなのですが、なんせ主人公が透明人間って設定が上手い!

まず、恐らくかなり低予算だと思うのですが、透明人間視点のPOV(厳密には違うけどそれに近い)っていうエロビデオみたいなギミックが入ってくることによって映像に独特の味わいがあります。
そして、透明人間の彼が盲目の少女と恋をするという運命の人感。透明だから当然ふつうの世間には出ていけないわけなので、完全に僕と君だけの世界。完全なるふたりぼっち。
でも画面の中に出てくるのはあくまでマドレーヌちゃんだけなので、これはもう観客と美少女がふたりだけの世界を旅できる究極の妄想映画なわけです!

本作は79分と短い作品ですが、作中ではかなり長い時間が描かれています。そのため、ヒロインも幼少期、少女期、オトナ期で3人の役者さんが演じていまして、これがまた全員めっちゃ可愛い上にちゃんと同じ人が成長していってる感じに見える、なんとなく似た雰囲気があるんですね。
特に幼少期はまるっきり人間とは思えない美しさで、向こうの可愛い子供ってほんとに天使そのものですなぁとびっくりしちゃいました。
比べると大人になったマドレーヌはかなり肌がアレしてきたりするわけですが、「肌は日本人のが綺麗やな」とか思いつつも不思議とそれがとてもエロチックに見えます。
で、透明人間視点映像でほぼヒロインしか画面に出てこないだけに、女の子の撮り方のうまさが真っ直ぐに男心を射抜きます。
うまさ、といっても、なんというかこう、素人臭さもかなりあるんですけどそれだけに生々しい魅力が伝わってくるというか。大作の映画を見るときの自分と距離がある感じじゃなくて、本当に自分がマドレーヌちゃんに恋をしてるいる感覚まで想起させるような適度な安っぽさも含めて上手い、という感じですかね。
とにかく、私はこの79分の間、たしかに彼女に恋をしていたのです......。

(あと、主人公のママ役がエリナ・レーヴェンソンなのにもびっくり。童顔のままおばさんになったアンバランスさがこのママの役柄に似合ってるのと同時に、若い頃に私を魅了したおっぱいは未だに健在でこれまたびっくり)


しっかし、私はこの映画、てっきりベルギー版『小さな恋のメロディ』みたいな清純な青春ラブストーリーたと思ってたのですが、それは誤解でしたね。

前半はまだ幼少期だからそんな直接的にヤバいことにはならないのですが、それでも目の見えない少女が警察犬も裸足で逃げ出すほどの抜群の嗅覚を駆使して少年を探すというふたりだけの隠れんぼには、性が目覚める前だけど、それに無邪気に近づいてしまっているような禁忌感があり、「あなたの匂いが好き」みたいなところではもう、ひぇ〜っ!と思いましたね。

そしたらそしたら、後半の方ではもうどうしたって「これ、エロビデオで見たことあるよ!」と叫びたくなっちゃうド変態プレイには思わずおいらのエンジェルも黒い悪魔に変わりましたよ。言わせんなよ///

ところがどっこい、それでもここは誰も触れないふたりだけの国ですからね。
こんな恐るべき変態プレイすらも純愛にしかならない。なんせ誰もいないから君しかいないわけで、君しかいないならこれはもうまさに最の高な純の愛ですやんな。

で、この変態プレイのシーンの......いや、いつまで変態の話するんだって感じだけど、もう少しだけ......このシーンのおっぱいがまたもの凄まじい。どうやって撮ってるのか知らないけど、透明な手に揉まれたおっぱいがひとりでにむにむになる映像の衝撃っすよね。これを見れただけでもおっぱい好きで良かったと思いますよ。おっぱい冥利につきますね。


また、ストーリーの展開も見事。
言ってしまえば見事なまでにありきたりとも言えるでしょうが、運命の出会い→中盤で垂れ込める暗雲→最大のピンチからの......ってな具合に、こういう映画のフォーマットにきちんと沿っていく。
演出にしてもそうですが、徹頭徹尾どこかで見たような既視感がある映画ではあるんですね。でも、それが観客に疑似体験できる形で描かれることで、「そうそう青春時代にこれをやりたかってん!」という一種のあるある体験装置みたいな楽しさがあるわけですよ。
で、それに浸っていたい、「(美少女との)純愛」というファンタジーを見たいと思うからこそ、見えないはずのエンジェルの姿がたしかに見えてくる、そんな観客の心理までを見事に利用した参加型純愛ラブストーリーになってるんです。

そう、はっきり言って純愛なんてものは存在しないわけですよ。
それはもうドラゴンとか勇者の剣とか僕のことを大好き過ぎる僕だけの橋本ありなくらいなファンタジーなんですけど、だからこそここまでしてそれを見せてくれる本作のことを私は嫌いになんてなれないんです。



ちなみに、透明人間がテーマのラブストーリーといえば、浦賀和宏『透明人間』ももの凄まじい傑作なのでついでに宣伝させてください。