偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

つぐない(2007)


1935年、戦火の迫るイギリス。タレス家の次女ブライオニーは、姉のセシーリアと使用人の息子のロビーのあるやりとりを目撃する。ロビーに恋していたブライオニーは、ショックからとある嘘をついてしまうが、それがやがてはじまる戦争と共に3人の運命を大きく変えてしまい......。



序盤はイギリスの金持ちの家で繰り広げられる愛憎劇みたいな感じでややかったるそうなんですけど、ところどころで時系列がちょっと巻き戻って同じシーンが別視点から再現されたりするミステリーのような構成を取っているおかげでなかなかややこしくて細かい伏線を見落とさないように一生懸命観なきゃいけなかったです。
そんなそれぞれの視点のすれ違いからとある悲劇に至ってしまうあたりが前半のクライマックスで、ここまででもうけっこうスリリングなんですが、後半は戦争が激化して主役の1人であるロビーが戦場に行くことになったりしてさらに緊迫感を増していきます。

前半と後半の間で5年の時が流れ、主人公ブライオニーを演じる役者も交代するんだけど、その空白の5年間というのがまたミステリアスな雰囲気を増幅していて良かったです。
ジャケ写の印象からてっきり切なくもキラキラした恋愛映画だと思っていたので、かなり重たい内容でもあるし単純に戦争の場面がかなりグロかったりもしてギャップにも驚かされました。

そして、主人公の姉セシーリアを演じるキーラ・ナイトレイの美しさがもう圧巻でして、最初の噴水に潜るシーンとかやばかったよね〜。あとマカヴォイさんも24重人格の坊主頭のおじさんというイメージしかなかったので(『スプリット』)、めちゃくちゃ美青年でびっくりした。
しかしやっぱなんといってもシアーシャ・ローナン(13歳)さんが上記の2人や助演のカンバーバッチさんとかを食ってるくらい圧倒的な存在感があって凄かった......。

ラストでは「つぐない」というタイトルの意味が明らかにされ、あんなふうに償おうとしてもそんなものは自己満に過ぎないのではないか?みたいな嫌な感じもあるし、長い年月を描いた話だけに一層取り戻せない人生というものに思いを馳せてしまいます。
ミステリー要素もあるから重たすぎないんだけど、しかしずっしりと余韻の残る美しくも残酷な物語でした。