偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

昼顔(1967)


医師の貞淑な妻セブリーヌ。ある日、夫の友人から高級娼館の話を聞く。彼女は好奇心からそこで「昼顔」という名の娼婦として昼の2時から5時の間まで客を取ることになり......。


知らなかったけど、たぶんこないだ観た『哀れなるものたち』のレファレンス元でした。

とりあえず冒頭の馬車で走ってたら......というシーンからして異様で引き込まれる(この場面も『哀れなる〜』にあったな)。
全体に秋らしい風景やファッションの色合いから出る哀愁が主人公の満たされない寂しさを表しているようで良かったです。

ストーリーは、ハンサムで優しい医師の夫を持ち、金銭的にも恵まれた暮らしを送りながらも夫とのセックスが上手くできなくて満たされないものを感じる主人公が昼だけ娼婦のに二重生活......という感じで、気品とプライドある主人公がきょどきょどしながら娼館に入っていくところとか笑っちゃうし、いざ働き始めると変な客ばっか来るのがくだらなくて面白い。なんか変な客が社長とか教授とかだったりするのも面白い。ドMなおっさんが娼婦がちゃんとドSするように指導しながら怒ったりしてるあまりのバカバカしさよ......。しかし裸に黒いベールはエッ......素敵でした......。
まぁそれは置いといて、夫はすげえ良いやつっぽくはあるけど、女にとってのセックスは子作りのためのものとしか思ってなくて(自分は結婚前に娼館に行ったりしてるので)、そんな彼のことを愛しながらも性的な好奇心に引っ張られて冒険をする......けど結局客の男たちも自分の(妻相手には出来なそうな)フェチい欲望を満たすことばっかり。でもそれはまだ良い方で、更に悪いとあのチンピラのようになってしまう......という上手くいかなさは、男たちの滑稽さこそ笑えるものの絶望的でしんどくもありました。しかしキーパーソンとなるあのチンピラ役の人めっちゃ良い顔してたな。イケメンっぽいけど明らかに普通じゃない感じ、クソ野郎だけどカッコよかったわ......。
昼は性愛、夜は夫への愛で上手く両立させられたら結構良い感じなんじゃないかと思うけど、そんな上手くいかないよね......っていう。

終盤では知り合いが店に来たりストーカー化したチンピラに付き纏われたりと適度にサスペンス味も出てきて結構ハラハラして目が離せなかった。
ラストはなかなかエグいけどそれだけに印象的で、全体を通して白昼夢みたいな掴みどころのなさがありつつ生々しい人生の存在感もあって、不思議なインパクトのある映画でした。






































































ラストは夫は死んでるんですかね?
死んでもう子作りを求めなくなった夫を妄想の中で生き返らせて愛し続けるメリバみたいなオチっていう解釈でいいのかしら?
最初と最後とアジア人の客のシーンで鈴の音が聞こえたけど、あのアジア人も妄想ってことなのか?そこらへんがよく分からんけどまぁミステリじゃないし全部きっちり解釈せんでもいいよねとも思う。よく分からんぼやっとした雰囲気をそのまま楽しみます。