偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生(2017)


5つ星ホテルで働くという夢を持つ青年サリー。しかしある日、先天性の網膜剥離の症状が急進し、視力が通常の5%まで落ちてしまった。
光とシルエットがかろうじて分かる程度で目の前の文字すらルーペがなければ見えない状況。それでも夢を諦められない彼は、障害を隠して一流ホテルのインターンに応募するが......。



夢、努力、恋、友情、全て詰まった笑って泣けるヒューマンコメディ。

それこそ夢とか努力って言葉がどうしても苦手なので、こういう映画をどこか穿った目線でしか観られない自分が悲しいですが、まぁ基本的にはとても面白かったしいい話だったと思います。

なんせ「実話ベース」というのがズルい。しかも調べたらモデルとなったサリヤさんは実際には15年とかに亘って視覚障害を隠し通してホテルで働いていたそうで、それを知ってしまうと「いやこんなんあり得んやろ〜」というツッコミは吹き飛ばされてしまいます。
しかしそれにしても「視力がほとんどないことを隠してホテルの入社試験を受ける」という設定が困難すぎてとても魅力的。
面接で出会ったやる気のない男マックスと友達になって彼の助けを得て「こっからここまで何歩やで」「階段が何段あるで」みたいなこと囁かれながらなんとか仕事をこなしていくのにハラハラ。この親友のマックス君が「お前なんで面接受かったんや」ってくらいやる気ないチャラ男なんだけどめちゃくちゃ良いやつで、彼の魅力にやられる映画だったと思う。他にも板長さんとかすげえいい味出してた。
もちろんそうやって人から助けられるのも主人公サリーの夢への真摯さと人当たりの良さによるものではありますが、一方で他人に迷惑がかかろうと自分の夢と嘘を優先させる彼のエゴイスティックな部分にむしろ人間臭さを感じてそこは良かった......んですが、こういったヒューマンコメディ映画に細かいことをぶちぶち言うのは野暮かもしれませんが、主人公が視覚障害者が活躍しているコールセンターの仕事をハナから見下してて「俺はこいつらみたいにはなれない」みたいなことを言っちゃうあたりがめちゃくちゃ傲慢に感じて、そこはややキツかったです。

後半の展開は怒涛ではあるけどテンプレ的でやや大味に感じられてしまいましたが、それでもベタに観たい話を観せてくれるのは気持ちが良いもの。エンディングもオシャレで良かったです。