フォロワーのバブルさんが推していたのに加えて、後述しますがとある曲をたまたまふと耳にして「ずとまよこんな感じなんか、ええやん」と思ったことがきっかけで昨年末くらいからじわじわとハマっていったずっと真夜中でいいのに。。
本作はそんなずとまよが2023年6月にリリースした3作目のフルアルバムです。
本作ですが、収録曲のほとんどがシングルもしくはミニアルバムに収録されていた曲で、新曲がほとんどなかったので、アルバム至上主義者としては正直そんなにテンション上がらなかったんだけど、そんでも実際聴いてみたらやっぱ知ってる曲ばっかでも一曲ずつがめちゃくちゃ良いし、最初と最後の曲がそれぞれ新曲でアルバムの最初と最後らしい曲だったのでそんだけでもう満足してしまったというチョロ助であります。
ずとまよに関しては正直にわかもいいとこで、歌詞の意味もなんや難しくてよう分からんわという感じだし、MVとか本人のキャラとか韮ちゃんとかの世界観も何も把握してないのでほんとにアルバム聴いただけのにわかの感想です、と予防線張っておかないと怖いっすね正直。
まぁでもどうせフォロワーのバブルさんしか読まないだろうしなんとなくで気楽に書いてみます。
とりあえずタイトルの「沈香学」からして何のこっちゃという感じですが調べたら沈香とは香木の一種だそう。
樹皮が傷付いたのを治すために出る樹脂から出来ているらしく、樹が大人になって沈香が出来るまでに50年とか100年とかかかるらしいです。
本作は長い人生において得る傷やその癒しについて歌われた曲も多いアルバムであり、「沈香学」というタイトルはその辺から来てるんかな、と思います。
これまでのアルバムに比べても本作は明と暗、静と動への幅が広くあらゆる音楽ジャンルを取り入れたバラエティ豊かな作品集になっていて、歌の表現力もより柔軟になってる気がして、にわかの癖に恐縮ですがずとまよの進化が感じられるアルバムだと思います。
以下各曲の感想。
1.花一匁
ルパン三世のテーマみたいな派手なブラスバンドから始まってスラップしまくりのベースのカッコよくもレトロなイントロからして最高!
本編もギターベースドラム+ブラバン+ピアノのゴージャスで賑やかなポップすぎるダンスチューンになってて、体を乗っ取られて無理やり踊らされるような楽しさがあります。
サビ終わりの「笑ってくれたらいいのに」の力強い歌い方と、ジャズっぽい曲調だけど間奏でがっつりギターソロが入るあたりが好き。
ずっと真夜中でいいのにって溢した午前5時。
バンド名回収から始まる歌詞に思わず「おおっ!」と言ってしまいました。
歌詞は夜更かしして創作する時のうだうだ悩んじゃう感じ、みたいなので、私も大学の時にちょっとだけ映画の脚本(と言うほどでもない)を夜中に書いた(と言うのも烏滸がましい)ことがあるのでなんとなく分からなくもないけど、でも本格的に創作をしたことがないし出来ないので、この歌詞もなんだかんだ創れることを羨ましく感じてしまいます。
ルーティンから もう抜け出せない 辞めたい辞められない 苦しいほど
僕が作るものは 既にあるものじゃーーん
何か出来そうな夜更かし 成仏させたし
意味が欲しいよ 花一匁 手に入らないこと わかってても
この傑作アルバムの冒頭の曲が、こんな創作における手癖とかオリジナリティに関する悶々とした気持ちを吐露するものなのが、これから始まるアルバムを心して聴こうという心構えを作ってくれます。
「成仏」とか「残り香」「花一匁」といった畳の匂いがしそうなワードチョイスも素晴らしい。
「じゃーーん」の伸ばし棒が多いところに茶化した風を装って折り合いのつかない鬱屈を感じてそれも良い。
寂しさに強い処方箋 欲しいよ 柄にないことばかり たらたら溢して 早起きの夜も 頑張りすぎは良くないので 健康でいられますように
うん、健康大事。
2.残機
にゃー(?)というセリフ(?)からはじまりいきなりスラップベース全開の激しいイントロでもうイっちゃう。
こっちは脳みそを乗っ取られるような全編全ての瞬間が気持ち良すぎて常にイってるみたいな曲っすね。
Aメロは低めで淡々とした早口の過剰なのが、サビにかけて上がっていってサビ終わりでは超高音の歌が入ってくる緩急の付け方も良い。2番ではAメロがラップになっててよりディープな世界に入っていく感じもかっこいい。
ラスサビでドラムが駆け出してどういう滑舌してんだって早口からのキュルって音で終わるあたりの怒涛感というか、息もつかせぬ勢いも良いよね。
あと、Cメロの「単純明快でしたっ」のとこの歌い方が最高。
前の曲で健康でいられますようにと言ったそばからの
いらっしゃいませ ニンニク増しで目指した健康体
と実践してるのが可愛い(違)。
歌詞はマジで分からんのやけど、残機というタイトルからも、擬似的に毎日のように死にながら生きていかなきゃいけない殺伐とした日常を歌っているのかと。
ただ穏やかでいたい 誰にも迷惑かけたくはないと思うが 戦わないと 撫でてもらえない 単純明快でした
この曲チェンソーマンのエンディングだったらしく、チェンソーマン全く触れてないので分からないんだけど、「戦わないと撫でてもらえない」とかバトル漫画的な世界観でもありつつ、私たちの普通の日常だってそうでしょ?という感じもして沁みますね。
3.猫リセット
ザーザー音からのピコピコ音でレトロゲーム的なサウンドのイントロで懐かしさを出しつつ、曲自体はゆったりめの落ち着いた感じなのがギャップ萌え。
Aメロのメロディが1番と2番が違うのがかっこいいけど難しくて覚えられない!
サビ前で演奏が混乱して行ってからのサビの「もっと」で止まるところがかっけえ。
あとサビはじめのコーラスがなんか耳元で言われてる感じがしてドキッとします。
タイトルの「猫リセット」というのはテレビゲームやってる時に猫が本体のリセットボタン踏んじゃってリセットされちゃうことらしい。言葉は知らなかったけど、小学生の時に猫飼ってる友達の家でよくあった現象なのでめちゃ懐かしい......。毎日スーファミやってたよなぁ。スーファミ今ほしい。
自分の存在定期的に 猫リセットできたら潔いのにな
なんかこの、死にたいじゃなくてリセットだし、しかも自分からじゃなくて猫任せだしみたいな、ゆる〜い自己嫌悪みたいなものがわかりみつよい。
ギターの弦費 食費 交通費 喉仏 行き場のない米と涙ぶつかる
こういう感覚、ほんとすげえと思う。ギターの弦費とか、行き場のない米みたいな意識をすり抜けていくようなモノに目を凝らすところは現代短歌みたいな趣さえある気がします。
違う違う ただ僕に合う長所 選んでいいかな
いわゆる「長所」として挙げられがちなものを身に纏えないけど自分の長所は自分で選びたい、というような。猫リセットしたかった自分を肯定することへの第一歩みたいな感じ......かな。
4.綺羅キラー(feat.Mori Calliope)
静かめの前曲からの、このアルバムが始まって初の激しいエレキギターのカッティングのイントロにテンションぶち上がる。
トリプルギター(かと思ったら一本は扇風琴らしい)の轟音がハードでカッコよくも、歌は文字数が多くて早口のそもそもラップっぽいものに、featuringの森カリオペさんのガチラップというギャップも良い。
特に2番のヴァースはピアノとラップ主体で超オシャレなのが抜け感になってて良いっすね。
サビ前でタイトルコールする「綺羅キラー」のところでギターも「綺羅キラー」って言ってるのが好き。
歌詞はまた輪をかけて分かんないんだけど、英語のラップと日本語の駄洒落を融合させた不思議としか言いようのないワールド。
最低なコンプだし 最高の昆布だし 揃ってるだけじゃつまらんし
しょーもない駄洒落みたいなことを言っといてからの「揃ってるだけじゃつまらんし」というノリツッコミにはさすがに爆笑しました。
底辺のてっぺんの味で 満たされたいわ
いつだって研修生 価値が小惑星
この辺がその「コンプ」に当たるのかなぁ。
なんとなーく、アーティストとしての葛藤とか劣等感みたいなものとか対照的な言葉が多用されるアンビバレントな感じとかがあって、掴めそうな気がするけど掴みきれない......。
でも語感の良さだけでもう最高の歌詞だと思う......。
てか冒頭の「周りに合わせる言語も知らねえ」という歌詞はずとまよの歌詞の不思議な世界観のことかしら。
5.馴れ合いサーブ
重低音効きまくりのもはやメタルみたいな激しいイントロから一旦口笛で抜いといてからヒップホップっぽいリズムを経由してまたメタルに戻るという不思議なアレンジのおかげで、めちゃくちゃ重くて激しいサウンドにもどこか倦怠感とか期の抜けた感じが出てるのが面白い。
Cメロで一旦ジャズパートになってからこの曲でも最大に激しい間奏に行くところも緩急が激しくて振り回されます。
そして、終わりに向けて重厚だったところからどんどん疾走感を増していく終わり方も好き。
名前出さないのに ちゃっちい 真似っこ正論 オリジナル定義 ウケる 脳内環境停止 荒めのギターで 掻き消したいや
Twitter???
適当ラリー やりとりが 唯一の居場所感で 仲良しこよしなんて 馴れ合いサーブでしょ
まんま、馴れ合ってる奴らへの苛立ちみたいなのを感じて攻めてて好き。
6.あいつら全員同窓会
「思い通りに起きれない」という冒頭の歌詞の通り、ドラムとベース主体でダルい寝起きのような静かで倦怠感のある始まり方なんだけど、Bメロでちょっとギターが入ってきたと思ったらサビ前で急にギターが暴走し出してサビでいきなりノリの良いスーパーポップソングになる豹変っぷりに驚きます。
そして、1サビ終わりから2番へと、ストリングスとかも入ったりしてどんどんノリノリで賑やかに。サビも2番はよりノリノリだし、ラスサビはよりストリングスが前面に出てきてなんか神々しいくらいの壮大さまで出てきて、とにかくどんどん上がっていく感じの曲。
......なので、一回最後まで聴いてからもう一回最初から聴くと同じ曲とは思えなくて間違えたかと思ってしまう。
思い通りに 起きれない 急いで飲み込む 納豆巻き
いや、朝から納豆巻き食うか......?というか歌詞に納豆巻きが出てくるの初めて聞いたぞ......と、ワードチョイスの良い違和感に引っかかっていつまでも「納豆巻き......」と思い続けてしまう。
どうでもいいから 置いてった あいつら全員同窓会 ステンバイミー 自然体に シャイな空騒ぎ
あいつらが全員同窓会に行ってる時点で置いてかれたのは自分なんだけど、そこを「置いてった」と言う2割くらい強がりも混ざった本音みたいなのが、なんとなく分かる気がしちゃう。「シャイな空騒ぎ」と言うフレーズも良い。
会っても癒えない世界で 匿名の自分になって 誰を批判しなくたって 発散できる言葉 探してる
この辺はわりとストレートですけど、全体にそういう有象無象的な「あいつら」への怒りをぶつけてるような気がする歌詞で、やっぱなんとなく分かる気がしちゃう。
7.夏枯れ
アルバム前半が終わり、激しくノリのいい曲が続いたところから一転して穏やかで切ないシティポップ風の曲。プラスチックラブとかああいう感じっすよね。
イントロのギターのカッティングとカチカチっていうシティポップでよく聴く音(あれなんなん?)が良い。
ただ、1番はめちゃシティポップなんだけど2番ではラップが入ってきたりとやっぱりジャンルミックス的にちょっとずつサウンドの感じが変わっていくので懐かしいだけじゃない新さもあって良い。
そして、ACAねさんの歌い方がまた儚く切ない!「探し回った夏〜」のとことか、もう心臓を鷲掴みにされて握りつぶされたみたいな気持ちになってしまう。死ぬわ。
この曲は映画『雨を告げる漂流団地』の挿入歌なんですが、歌詞には映画の内容を連想される描写もありつつ、夏の終わりの切なさを描いた新たな夏ソングの傑作になってます。
忘れらんない 夕日が 君にとって も同じ想いだってきっと 幻みたいな偶然を 探しまわった夏
「夏枯れ」というのは夏の暑さで植物が枯れてしまうことらしいですが、この曲では夏そのものが枯れていくような印象。夕日というモチーフが枯れる感を強烈に焼き付けています。
木目、缶ジュース、高架下、といったエモいモチーフが乱れ打ちされた最後に
今日で 終わってしまうなら 君に会えた それだけで もう 生きてもいいような 気がして 繰返し笑い合うんだ 居たくなる旅
と来るのがズルい。生きねば。
夏の終わりにはなんとなく死のイメージがありますが、そこに「生きてもいいような」をぶつけてくるのが良すぎる。
8.袖のキルト
ふっふっふっふっふ〜という淡いハミングで切なく始まり、美しいメロディのピアノと共に歌い出すあたりはちょっと神聖かまってちゃんを思わせるところもあり、しかしサビにかけてずとまよになってく感じ。
2Aでドラムが打ち込みっぽくなったり最後の方はストリングスが派手になってキラキラしてったりアウトロのギターがカッコよかったりとやはりアレンジがめちゃ詰め込まれてて切なくも楽しい曲。
歌では、特にサビ頭の「袖に触れる瞬間〜」あたりとかの伸びやかで無垢で健気な感じが美しすぎます。
勝手に一人 担ったし 隠れ敬語が 日課になったし 気が合うと思ってた 今日でも 気まずくなるんだな
具体的になると 話せない 積み重ならない 石碑みたいに 突っ立ってたけど 予測癖みたい ただ続けたかっただけなのに。
歌詞は相手と上手く話せない系ラブソング。
積み重ならない、ただ続けたかっただけなのにというのが非モテ陰キャ的にはわかりみありすぎてつらすぎる......。
袖に触れる 瞬間の声 君が靡く 僕は願う 今はまだ このままで 不揃いのサビ 繋ぐ花火 言いたい言葉 走って 叫びたい気持ちを 恥じらって 歌うのは 僕のキルト
例えば手ではなく「袖」に触れるような近そうで遠い距離感。キルトのように継ぎ接ぎの言葉をなんとか紡ぐもどかしさを繋いで引き留めている日々。
サビが不揃いだけど同じ花火を見て繋がっているような関係......なんかつらい記憶を思い出しそうです。まぁ俺は女の子と花火なんか見に行ったことないけどな......。
でもこのなんか、お互いにニコイチ感はあるのにいざ会うと相手に届かない気がして上手く振る舞えない感じわかる。
9.不法侵入
歌始まりのヒップホップっぽいサウンドのバラード。切なくて儚くてやるせなくて透き通ったような曲ですね。
歌い出しの「もどれ」のところの声がほんっっとに良い!そこだけじゃなく全体にやっぱバラードなんで歌をじっくり聴けるようになってて、呟くようなラップや吐息のような歌から伸びやかに歌い上げるところまで、歌の表現力の進化を感じられます。
歌詞は前曲からの流れで曖昧な関係の2人について。
見つめ合える度に 疑問を込めて ただ違うなら わかりやすく教えて? それとなく 寂しさ凌ぎ?
なら早めに覚まして
相手の真意が分からない状態、切なすぎる。
曖昧はもう十分です ねぇ気づいてる? 全細胞に込めたけど 引き摺るんだよ 曖昧なのは自分だって わかってる? 慣れない皮膚で叫ぶ 君じゃなきゃだめなんだよ
慣れない皮膚なのは全細胞にこもってるから?そういう独特の表現の最後にある珍しいくらいストレートな気がする「君じゃなきゃだめなんだよ」にグッと来ます。
あとどーでもいいけど「全細胞に込めた」をずっと「前菜も煮込めた」だと思ってました。
君のぬくもりが不法侵入
およそポップソングのタイトルとは思えない不法侵入というワードをこう使ってるのが凄えし合法侵入じゃないのが切ない。
10.ばかじゃないのに
これも歌始まりの曲。低めの声で淡々と抑えめに歌うAメロから、フラットな感じのBメロに行ってサビでは泣き出しそうな歌い方になるのでサビへ向けてどんどんエモくダンサブルになっていくのが最高。こういう泣きながら踊る感じの曲が大好きなので大好きです。
性急な感じのドラムのリズムと、間奏の星野源みたいなチャキチャキしたカッティングギターがカッコいい。間奏のちょっと星野源の「恋」っぽいとことかいいよね。夜の切なさを凝縮したようなアウトロも短いけど大好きです。
歌詞はかなりストレートで、もう会えない相手への恋の歌だと思う(でもやっぱ細部はなんもわかんねえけど)。
やはり前の曲からの流れで、一緒に暮らすくらいの関係でありつつ、曖昧な関係の先を築けなかったお話のように思います。
1番ではお線香の匂い、扇風機、色の濃い野菜というちょっと変わった夏ワードが散りばめられて、夏が一瞬で終わってしまうように2人の関係も終わってしまうことがなんとなく仄めかされています。
言っとけばいいのに ばかじゃないのに 在り来りだろうけど 僕には 君を思い返す日々で過ごしていける?
先ばかり気にする君と 遅れをとるわたしと ふと ぎこちない日々を 思い浮かべてた
この先どうする ね どうしよう わからない 君が溜息つく このやりとりに 安心できる 自分がいた
先に進む歩幅が合わないというまさに「在り来たり」な別れが切なすぎる。
疲れてくことも 慣れていたと思う それが始まりで 義務になったし ゴールだったし ご飯できたよ
互いに疲弊する関係について何度も何度も思い返しながら、君と暮らしていた時のようについご飯できたよと言ってしまう......みたいな感じだと思うんだけど、切ない。
終わりが近いと 仲良くなれたし
切ない。
もう居ないのに 惹かれ合うのに 一瞬の夏だったよ ありがとう 僕に残ってる 引き摺る温もり ずっと まだ目の前に
切ない。
11.消えてしまいそうです
実はこの曲がずとまよを聴き始めたきっかけでした。というのも、この曲『雨を告げる漂流団地』という映画の主題歌で、別の映画を観に行った時に予告編でこの曲が流れてるのを聴いて「へえ、ずとまよってこういう曲もあるんだ」と意外に思ったんですよね。当時は「秒針を噛む」とかみたいなワチャワチャした曲ばっかだと思ってたので、こういうチルっぽい曲のイメージなくて......。
それに加えてフォロワーさんが推してるのもあって聴き始めたって感じっすね。
で、この曲ですが、「夏枯れ」と同じくシティポップっぽいファンキーさのあるオサレミュージック。
落ち着いた雰囲気の曲ではありつつ、管楽器やピアノも入ってて実はかなり賑やかなサウンドではあり、入ってる音全てが気持ち良くて音楽に包み込まれるような気持ちで聴ける曲です。大好き。
サビに入る直前の「きーみーのー」が好きすぎる。というかこういう、サビの歌詞の最初の単語だけサビ直前で言うやつ好きなんすよね。
助けたい表面 寂しさが少年
この歌い出しから、歌詞は何か悩んでいる君を助けたいけどどうしていいのか分からない少年の歌なんだと思います。
柔らかな緑は ただ 僕を やり直させようと必死で ままごとを続けた
君を傷つけてしまったことをやり直したいんだけど、上手くできずにママゴトみたいなぎこちない関係を続けるしかない、みたいな感じかな。切ない。
君の吸い込んだ空気で 消えてしまいそうです 未完成で 低姿勢で 気持ち任せです 乱暴に手を振った 気配に負けそうです
君のSOSは 僕のものって 思い込んだ夏
なんつーか、特に子供の頃の恋って、君にとって自分に何か価値があるのかとか考えると消えてしまいそうになることがあって、違うかも知れんけどなんかそういうことなのかな、と。
それでも、君のSOSが僕に向けられていると思い込みたい、そんな不器用な恋模様(恋じゃなくてもいいけど)が切なくも愛おしい。
この「SOS」をはじめ、歌詞には屋上とかひとけのない部屋とか、『雨を告げる漂流団地』のキーワードも出てきつつ、歌だけでもストーリーを思い浮かべられるようになっていて良いタイアップ曲だと思います。
12.ミラーチューン
ディスコっぽいタイトル通りのキラーダンスチューン!
煌めくカッティングギターのイントロからの「3,2,1 mirror tune~」の掛け声も可愛く楽しい。
ワチャワチャした感じの曲ではあるけど、ヴァースは抑えめだったり間奏のサックスのソロがオシャレだったりするので聴いてて疲れることもなく中毒性が高いっす。キラキラピコピコした効果音みたいなのが入ってたりも楽しい。ラスサビでこんだけ分かりやすく転調するのも実は珍しい気も。アルバムの最後から2曲目で、もうすぐ終わってしまう切なさも滲ませながらも最後のから騒ぎをするような楽しさてんこ盛りの曲です。
ミラーボール+キラーチューンでミラーチューン?
光り輝いてて踊れるこの曲そのものを表したタイトルで、楽しい曲作ってくぜっていう覚悟や、リスナーへの想いが感じられる気がします。
ねね 楽しめる主導権 握らせて 情緒 高鳴る お互いに良き条件 もう明るい関係選んでゆくんだ
君がいなきゃ はじまんない 歌うぜ GACHIフォー・ユー
恋の駆け引きのようにも読めるけど、アーティストとリスナーの関係のようでもあり、これがアルバムの後ろから2番目に入ってるのはやっぱエモいっすね。
13.上辺の私自身なんだよ
そしてアルバムラストは静かでディープな雰囲気のこの曲。
ギター、ドラム、ベースのみのシンプルな構成ですが、憂いのある深夜っぽい曲でカッコいいです。
ドラムフィルの入りから、アダルトな感じのベースと、シューゲイザーっぽい歪んだギターのイントロが不穏な倦怠感を出していて、前の曲とのギャップにびびりつつもアルバムラストらしい重みがあります。
歌もラップとリーディングの間くらいのところから超高音まで幅広いんだけど、どっちにしろ常に悲しみを纏っている感じでとても良いです。
そして歌詞も憂いとやるせなさを含んだ深夜の独り言のようなもので、ここまでアルバムを聴いてきた私だけにこっそり心の内を打ち明けてくれるような、パーソナルな感じがあります。
ああ いつしか優しい言葉じゃ 効かない リハビリしたけどさ ただ 心配かけないよう 顔文字で笑っていよう 笑っていよう そういう時期もあんだよ
そういう時期もあったなぁ、とちょっと遠く感じてしまうのは感性が磨耗してきたからですかね。
希望だと捉えても ぐさり 生ぬるい風=傷口によい風 こんな目に見えない絆創膏 になりたいし味方でいたい
一方で、Cメロ的な部分にラップ調でこういう歌詞が入ってて、そこから最後の最後に
それは誰にでもあんだよ
で終わる寄り添い方はつらい時期に聴いてたら泣いてたと思う。
そして、アウトロがそのまま不穏な感じでふわっと真夜中に溶けていくみたいな終わり方も素敵です。