新三大奇書としてお馴染み(?)の『左巻キ式ラストリゾート』の著者。まさかもう一度この人の作品を読むことになろうとは思いませんでしたが、今作は普通に面白かったです。
- 作者: 海猫沢めろん,市川春子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/10/13
- メディア: 文庫
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まさに、愛についての、感じ、という感じですね。本作は5編収録の短編集ですが、各話で「愛」に近づいていながらまだ「愛」を知らない人たちが出てきます。
しかし、そうしたテーマの共通性がありながらも、各話の内容は設定もジャンルも文体すら丸っきりそれぞれ違うのが凄えんですよ。
ケータイ小説かブログかみたいな軽薄な文体のドタバタサブカルホスト小説から、著者自身の随筆風のもの、ファンタジー風味のものもあればヤクザと風俗嬢のレトロな悲恋ものまで、とにかくあの手この手で「愛」についての感じを描き出して飽きさせない。しかもどれも読みやすいので一気読みでした。
で、この本の感想を書こうと思ったのですが、はっきり言って夢眠ねむ氏による解説(文庫版)が本書の魅力を全て言い表しているので、気になる人は立ち読みで解説だけ読んでください。私から言えることは以上です。
あ、ひとつ、印象に残ったのが、レザーフェイスの話の「どこまで理解すれば本を読んだ/映画を見たことになるのか問題」です。文字を追えば読んだことになるのか?作者と同程度まで作品を理解したら読んだことになるのか?ということを考え出すともう読んだなんて言えないっていう、アレ。こんなブログやっといてからにあれですが私もたまに思うことがあり、でも最終的にはなんも考えずに読んだことにして「読書感想文」などと銘打ってインターネットに載せることで溜飲を下げているフシがあるので身につまされました。
というめっちゃ細部の感想だけ書いて今回は終わります。