偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

トーク・トゥ・ミー(2022)


母の死を受け入れられずにいる高校生のミアは、SNSで話題の憑依ゲームに参加する。それは、呪物の"手"を握り「トーク・トゥ・ミー」と唱えると霊に憑依されるというもの。そのスリルにのめり込むミアたちだったが、親友のジェイドの弟ライリーにミアの母の霊が憑依したことをきっかけに事件が起こり......。


監督はオーストラリアの双子の兄弟YouTuberらしく、A24配給ということで、観る前から何かと話題性もあり楽しみにしてました。
んで実際観たんだけどなかなか面白かった!

設定と緩急の付け方が上手いっすよね。
呪物の手というギミックと、降霊の様子をSNSにアップしてバズってるというシチュエーションのおかげで、内容自体はわりかしベタな幽霊ホラーでありながら新鮮さがあるのは温故知新というか換骨奪胎というか。そしてその設定により本作自体にもバズル感が出ると同時に若者たちのリアルを描き出すというテーマの部分にもぴったり合っててすごいと思う。

冒頭のとある兄弟のシークエンスのラストがショッキングで心を掴まれつつ、その後しばらくは誰が主人公なのかもよくわからんかったるい群像劇みたいな序盤。「手」の初登場シーンも(降霊を遊びにしてネットに載せる姿は異様ではあるけど)そんなにインパクトはなくて「これ、大丈夫か?」と一瞬心離れそうになってしまぃ好き。しかし、そっからとあるシーンでもう、ほんとに首根っこ掴まれて無理やり引き寄せられるような、強制的に没入させられちゃうヤバい映像が観れて、ポップコーン食べる手もフリーズしちまった。あのシーンの存在だけでもう元は取れたぜ。

「手」はパーティーで濫用され中毒性の高いドラッグの暗喩のようにも描かれていますが、それだけでなく、若者たちが(特にコロナ禍以降)人との繋がりに飢えていることを表しているようにも見えます。「手を繋ぐことで霊を降ろす」というビジュアル的な分かりやすさとテーマの視覚化の両面に効いてくる上手いモチーフだよね。

後半ではそうした人との繋がりを求める様を軸に、じっくりと主人公が抱えるものが描かれていく......という流れになり、SNS世代の人間ドラマとしても見応えがある作品。
後半は怖いというよりはジメッとした嫌な感じで、悪い人は出てこないのに救われない哀しさとかもどこかJホラーに通じるところもあり、とても良かったです。てっきりもっとハイテンションで軽いホラーだと思ってたので......。
まぁあと、犬が良かったわ......。犬が良い映画は良い映画よ。


そして本作、続編の制作も決まっているらしく、綺麗に完結した結末だったので続編いらねーよと思いつつも、あの「手」が出てくるだけの全然別の話とかだったらちょっと観たいかも、とも思わなくもないです。