その名前は知っていましたが、チャップリンと並んでサイレント期のコメディ映画を代表する古い人くらいの認識しかありませんでした。監督・脚本・主演、全部自分でやってるんだっけ、凄いよね、でも100年くらい前の人だよね?今観たって古びてるんじゃないの?と。
製作年:1924
監督:バスター・キートン
出演:バスター・キートン、キャサリン・マクガイア、ジョー・キートン、ウォード・クレイン
☆4.0点
ごめんなさい!100年近く前の作品だけど今見ても凄かったです!
というわけで、今回は私にとってキートン初体験となったこの作品の凄かったところをざっくり4つに分けて紹介します。
1.アイデア溢れる映像が凄い!
1924年の映画です。CG技術なんか影も形もないどころか、色すらありません。白黒です。
しかし、現代のような技術がない分、アイデアだけで様々な工夫を凝らした映像は面白く、「こう撮るのか!」「どうやって撮ってるのこれ?」という驚きや不思議さは、よく出来た奇術を観ているようですらありました。
例えば夢の世界に入るシーン。夢というよりは幽体離脱みたいになってますが、キートンから半透明なキートンが抜け出てくるシーン、これ当時の技術でどうやって編集してるんでしょう。
幽体離脱〜
話しかけるも本体はぐっすり寝てます
2.セリフなしでも笑えるユーモアが凄い!
なんせ1924年の作品ですから、当然の如くモノクロ&サイレントです。もちろんところどころで説明やセリフの字幕は出るのですが、それだけでは言葉によるギャグはほとんど使えません。
それでも動きだけで何が起きているか分かり、動きだけでギャグを連発して笑わせてくれるから凄いんです。
ギャグの質も、ドタバタ劇でありながらどこか知的で上品なところがあり、100年経った今も古びていませんでした。
お約束の尾行コント
3.夢と現実が綺麗に纏まったストーリーが凄い!
本作は現実でのエピソードの間に、キートンの夢のパートが挟まれた構成になっています。
現実ではひょんなことから濡れ衣を着せられてしまう三枚目なキートン。しかし夢の中では彼は名探偵SHERLOCK JR.になって、悪い奴らの奸智を見事にかわしていきます。
もちろん今時のミステリーみたいに夢と現実が複雑に絡み合ってラストでどんでん返るなんてことはありません。でも、夢のハッピーエンドから現実のエンディングへの流れが綺麗で、夢から醒めたあとの夢みたいな多幸感が最高でした。
4.コメディなのに溢れ出る詩情が凄い!
「夢」というものがテーマだと、やはり幻想的な雰囲気や現実離れした美しさを期待してしまいますが、この作品はそこのところもばっちしでした。
夢のシーンでの、映画の中に入って色んな場所を旅するところや、車で湖を泳いだりするところは、ギャグでありながら詩的な美しさに満ちていて、忘れられない名シーンだと思います。
映画の画面の中へ......
車で水上をドライブデート。なんてロマンチック!
下半分はお留守番
また、ストーリーもシンプルではありながら 恋人の愛を取り戻す綺麗なラブストーリーになっています。一つだけ気になるのは、現実では結局キートン何もしてないところですが、まぁ夢で頑張ったからおっけーということでしょう......。
観る前は古典のお勉強みたいなつもりでいましたが、実際に観てみると一気に引き込まれてしまいました。
古い映画と侮るなかれ、古いからこそのクラシカルな雰囲気と、古びない瑞々しい美しさを併せ持った名作ですね。
これから他のキートン作品も折に触れて観ていきたいです。