偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

草原の輝き(1961)


高校生の少女ディーニーは同級生のバッドと恋人同士。しかしディーニーは母の言いつけからバッドに体を許すことが出来ず、バッドも石油会社を経営する父親に理想の人生を押し付けられてディーニーとの結婚を許されなかった。やがて2人の関係は歪んでいき......。



あんま観たことないエリア・カザン監督による青春ラブストーリー......と思ってたら火傷するトラウマ恋愛映画です。

熱烈に愛し合ってるけどお互いに毒親(というか昔はこんなもんだったんか?)に理想を押し付けられて、それと自身の望みとの軋轢によって少しずつ擦り減るように壊れていく様が恐ろしく悲しい。
特にナタリー・ウッド演じる主人公のディーニーがタイトルにある「草原の輝き」の詩を朗読するシーン以降の彼女の痛々しさはヤバい。
ウォーレン・ベイティ演じる少年バッドが他の女と関係を持ってしまうのも、普通なら「クソ野郎め」となりそうなところ、全然責める気になれないくらい憔悴させられてるのがエグくて苦しくなります。
親に対する反感を抱えつつも、なんだかんだ親に逆らうことは出来ない2人にも高校生のリアリティが感じられて閉塞感に息が詰まります。

そして親たちもなんか本当に憎たらしいんだけど、かれらなりに子供を思ってやってることでもあるのがつらく、本気でクソみたいにズレたことばっか言ってるとこには途中から憤りを超えて憐れを感じました。なんか、完全に断絶してて......。

また、バッドの姉であるバーバラ・ローデン演じるジニーは、横暴な父親への反感が行きすぎて誰とでも寝る女になってしまったという人物でインパクト強かったです。自由奔放とも称される彼女ですがそんなはずもなく、ああやってヤケクソみたいにしか生きれなかったことが悲しすぎる。彼女が酔ってヒステリックに喚くシーンのその演説の正しさから誰もが目を逸らしているのが堪らなく醜悪でめちゃくちゃ印象的でした。

その辺のディーニーやジニーが崩壊するシーンあたりから、後半にかけて物語はより陰鬱になっていって、親たちの醜さもどんどん増していってなんかかなりシンドイんですけど、そういうあれこれを経験した上でのあの結末がすごいなんかこう色んな感情の奔流に飲み込まれそうなエモさがありましたね。

親世代との断絶とかを描いてて分かりやすいハッピーエンドではないあたり、少し後のニューシネマっぽい雰囲気もありつつ、バッドエンドというわけでもなく、最後のシーンでタイトルの意味がじわじわと沁みてきて、自分も世紀の大恋愛をしたような余韻に浸れました。




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