偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

パール(2022)

タイ・ウエスト監督による、前作『X』の前日譚で、3部作構想の2作目となる作品。
『X』の殺人老婆パールの若かりし頃を、前作で主人公マキシーンを演じたミア・ゴスが演じます。


田舎の農場で母と共に全身不随の父の介護をしながら暮らすパール。彼女にはダンサーになって映画に出てスターになるという夢があったが、厳格な母は夢なんか捨てて家を手伝えと言う。そんなある日、パールは村の教会で行われるダンスのオーディションを受けるが......。


今作では主演のミア・ゴスも脚本に参加しているようで、そのためか、彼女が演じる主人公パールの内面を掘り下げながら怪演を見せつけるためのストーリーになってます。
ざっくり言うと鬱屈した日々を送るパールがだんだんぶっ壊れて最終的にみんな殺しましたとさ、という話なんですけど、その鬱屈の描き方がちょうどいいんすよね。私もこんな暮らししてたら頭おかしくなりそう......って共感と、でもそれでここまでやるか!?っていう驚きのバランスが良い。可哀想さと怖さのバランスっつーか。殺される側、特に関係ない人たちからしたら理不尽でしかないんだけど、パール目線で見てると殺しちゃうのも分かる気がしちゃうのが怖い。
そして、ミア・ゴスの顔芸とシャウト芸によるハイテンションな怪演によってパールにより惹きつけられて入り込んでしまう。凄いです。
オーディションのシーンのいたたまれなさとか、ほんとすごい。とても嫌な気持ちになりました。
ただ、中盤で長々と語るシーンは、緊張感はすげえんだけどちょっとセリフで説明しすぎな感じがあり、自分のことそんなに客観視出来てたらそうはならんやろ......という気もしなくもなかったです。

あと、前作がエログロ描写や映像のポップさが凄かったので、それに比べるとどちらもちょっと弱く感じたかな。予告編がめちゃくちゃポップでキュートなのでずっとあの感じだと思ってたら、予告編に出てくるシーン以外はわりと地味だったといいますか......。
とはいえ目に焼き付くような奇妙で汚くて美しい場面がいくつもあって楽しかったし、何といってもエンドロールが凄かった......。アレ、うちの妻が私を怖がらせるためによくやってくるので、なんかそれ思い出して笑っちゃったし、周りのお客さん誰も笑ってなくて「みんなこれそんな真面目に観てるの......!?」と思ってしまった。いや、辛い話なんだけど、あれはギャグでしょ。

たぶん流れ的には次作が本作と前作の間を描いて完結みたいな感じかしら?3作目も楽しみです!