偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

2023年、私的アルバムランキング!!!

はい、毎年恒例の今年のアルバムランキングのコーナーです!

今年は個人的には今まで聴いてなかったあれやこれやを聴いた年でしたがそれがみんな元から人気あるバンド、アーティストばっかだからなんか客観的には目新しさほぼ皆無のランキングになっちまいましたがまぁ元よりこんなものは自分用の備忘録なのでそんでええんや!と開き直りつつランキングを決めました。

それでは10位からです!




10位 羊文学「12hugs(like butterflies)」

実を言うとまだ聴き始めたところなのでこれから聴き込めばもっと好きになりそうな気がしますが、数回聴いた限りでもすでにかなり好き。
短い弾き語り風の一曲目「Hug.m4a」という曲名にも象徴されるように、無機質さと生々しい体温が同居したようなサウンド・歌詞は、まぁいつもの羊文学らしさかもしれんけど本作では特にその感じが強くて好みです。
ヒット中の「more than wards」の澄んだ音からの激しい「addiction」とか、遊び心のある「GO!!」や「countdown」とか、最後の「人魚」「つづく」「FOOL」の流れとかまぁ全てがなんか良いっすね。一応羊文学の曲だいたい聴いてるつもりだけどアルバムとしてだと本作が1番好きかもしれんくらい。




9位 Marco Castello「Pezzi Della Sera」

アーランド・オイエとバンドやってるSSWのソロアルバム2作目。
相変わらず詳しいことはよくわかんないんだけどとにかく曲が良いから最高です。
本作は前作に比べてちょっとアダルトな印象というか、優しいメロディにディープなグルーヴ感もあってより夜っぽさを感じるアルバム。突出して好きな曲があるのは前作だけどアルバム通してだと本作のが好きです。




8位 vaundy「replica」

vaundy、こんなにシングルばっか出して、もうアルバムは出さないのかしら......と思っていたところからの、シングルほとんどを20曲入りのディスク2にまとめてディスク1はオリジナルアルバムとして新たに作った全35曲入りの新作ってのにおったまげました。
これがただのシングル寄せ集めだったら「知ってる曲ばっかだしいっかな」って聴かなかったけどちゃんとディスク1はアルバムとして作ってくれたのが嬉しいっすね。
(ちなみにking gnuは同じく大量にあった既発曲をアルバムverにリアレンジしつつ1枚に納めてましたが、やっぱ結局は知ってる曲ばっかだからあんま聴く気にならなくて......すみません)

そしてタイトルが「replica」ときましたからね。
前からvaundyの曲は全部どっかで聴いたことある感じがしてそんなにハマってなかったんですけど、それをレプリカだとある種開き直りながら堂々とこれだけの大作として作り上げられちゃもう脱帽っつーか、今まですんませんっした、という感じ。
なんせオマージュ元が有名なのが多いし分かりやすいパクり方をしてるので私みたいな音楽初心者でも「あ、これアレじゃん」という元ネタを見つける楽しみが味わえて、音楽マニアにだけ許されてきたそれを自分もやれたのが楽しかったのでありがとうvaundy。
あと元ネタに歌い方や歌詞まで似せてるのがすごくて、表題曲で急にデヴィッドボウイのモノマネが始まるのには爆笑したし、「泣き地蔵」の「何回目の愛のお買い得」とかめちゃくちゃ野田洋次郎が言いそう!みたいな楽しみ方ができて、これはこれで音楽の楽しみ方のひとつかもなと思わせてくれたアルバムです。
なんせ長いのでディスク2はそんなに好きじゃない曲とかもあるけど、そんでもディスク1は濃淡はあれど全曲好きだったから最高です。特に黒子と美電球とreplicaが好き。




7位 ドレスコーズ式日散花」

近作はそんなにハマってなかったドレスコーズですが本作はかなり良かった。
前作『戀愛大全』が恋愛=生の印象のアルバムだったのに対し、本作は式日=死で姉妹作のようになっています。個人的にやっぱ死がモチーフの物悲しさや虚しさや儚さのある作品ってのが好きなのでその辺の好みでハマったんですよね。
全体にはキラキラと透き通って儚いギターサウンドのイメージですが、スローでメランコリックな「メルシー、メルシー」やオシャレさを排した懐かしディスコチューンの「在東京少年」など一曲ずつを聴くとアレンジの幅も広くて飽きずに楽しめます。
最後の表題曲「式日」の、

はじめての別れ
いつかこんな別れにも
ならされてゆくなら
今日がぼくの
はじめての式日

という歌詞からの1分以上のギターソロアウトロがエモくて、この曲でそれまでの曲の物語たちが幕を閉じるような感覚があります。
またボーナストラックの「ドレミ」もどちゃくそアダルトな雰囲気でかっこいいしエロい。
10曲ほどの短さも儚い雰囲気にあってて夏が来るたびに聴きたくなりそうなアルバムに仕上がってます。




6位 カネコアヤノ「タオルケットは穏やかな」

カネコアヤノのアルバムをそんなに聴き込んでるわけではないので比較するのは難しいんだけどなんか前作までよりもシンプルかつ多彩になった感じがして、そもそもその二つが矛盾してる感じもするけど、たぶんメロディとかがくっきりした部分がシンプルに感じてアレンジの多様さが多彩に感じてるんだと思われます。
前作とかは包み込むような優しさだったのに対して今作はちょっと距離を置きながら導いてくれるような優しさというか。
1曲目のシューゲイザーっぽさとか、2曲目のわうわうしたギターサウンドのかっこよさとか、7曲目の清澄な暗さと暖かさとか、リズム主体で不思議な雰囲気な最後の曲とか、アレンジの幅が広いとこがやっぱ好きなのかも。
あと歌詞で言えば特に好きなのが「季節の果物」という曲。

優しくいたい
海にはなりたくない
全てへ捧ぐ愛はない
あなたと季節の果物をわけあう愛から

全て捧ぐ愛という言葉だけは立派な幻想を破壊しながら手の届く範囲内の愛から広げていこうという、「愛」への真摯さに救われる良すぎる歌詞!





......さて、それではベスト5の発表に入る前に、今年の個人的な音楽トピックの振り返りです。
今年はまずはなんと言ってもリーガルリリーの年でした。
昨年の1月に出たアルバムからどハマりして、今年の4月にライブ、6月にミニアルバム、11月にまたライブと依然リーガルリリー熱が冷めやらぬまま今年を駆け抜けてしまいました。



たぶん来年あたりアルバムが出そうだし、出たら来年の1位もリーガルリリーになることをここに予告しておきます。

それと、今年はクイーンのアルバムを月1で全作聴く企画を実施。
いわゆる黄金期じゃない時期にも常に名曲があってさすがですね。個人的にはJazzからHot Spaceあたりのちょっとディスコとかブラックミュージックに接近してるあたりの作風が意外と好きでした。しかしどのアルバムにも特別好きな曲が少なくともひとつふたつはあって良かったです。

あとはビートルズの最後の新曲ですよね。
ビートルズは生まれる前から聴いてましたが私が生まれてから新曲が出るのは今回が初(フリーアズアバードとかは産まれてはいたけど......くらいなので)で、逆に言えば人生においてこれまで一度も新曲が出てないバンドをずっと好きで折に触れて聴き続けてるわけなのでやっぱビートルズは凄え、てか自分にとって特別な存在だなぁと再確認できた年でした。

あと、今年は川谷絵音のファンを辞めてからはじめて彼のバンドのアルバムが出た(というのをApple Musicのオススメで知らされてしまった......)年でもあり、聴けば絶対に好きな音楽を思想的および生理的理由で聴けないストレスを味わって一時期かなり荒れていましたがリーガルリリーに救われました。ありがとう、リーガルリリー。

そんな感じで、それではいよいよベスト5の発表です!



5位 GRAPEVINE「Almost There」

GRAPEVINE18枚目のアルバム。
前作の流れを引き継ぐような憂いと色気がありつつ、ほんの少しだけ明るくなった気がしなくもないアルバムです。

原曲なのに何かのリミックスのようなヘンテコなサウンドの「雀の子」、王道美メロロック「それは永遠」、若手ギターロックバンドみたいなストレートな曲をバインがやると逆に変な「Ready to get started?」、最近多いディスコ枠の「実はもう熟れ」、和テイストの祭囃子に乗せた世の中への怒りがなんか変な方向へ向いてて笑える「Goodbye,Annie」、タイトルにギョッとしたけど聴いてそっちかと驚かされる「SEX」などなど、アレンジの幅も多彩で1枚通して最高であり続ける名盤です。




4位 スピッツ「ひみつスタジオ」

まぁ、もちろん私の中ではいつでもスピッツが1番ではあるんですけど、毎回1位にするのも出来レースが過ぎるので今回はここらへんにしときます。
というのも、本作もちろんめちゃくちゃ良いしエモいんですけど、個人的には前作までのスピッツスピッツであること自体を歌っていた頃のスピッツファンにとっての祝祭感が忘れがたいんですよね。一転、本作はより外へ向いた作品で、実際今年はスピッツがついにブレイクしちゃったな......とクソ老害としてはちょっと寂しくなってしまったのもあり、こんなこと言っちゃいけないんだけどなんかにわかファンがアイドルみたいな推し方をしてるのを見るのがダルい感じもあって......みたいな、まぁ全部音楽とは何の関係もないことで、こんなことを思ってしまう自分をぶち殺したいくらいなんだけど本音ではそう思うから自分のブログに書くくらいは許して欲しいなり。
作品の内容については前にブログに書いたのでそっち読んどいて。




3位 Mr.Children「miss you」

ミスチル最近アルバム出してないよな〜と思ってた矢先に発表された、シングルなし、13曲全て新曲のニューアルバム発売のニュースにワクワクして、サブスク配信を待てずにCDで買っちゃいました。

そんで聴いてみたらもう、びっくりですよ。ミスチルなのに超オーガニック!ギターもほぼアコギだし。曲も短いし(一曲平均4分なんてミスチルのアルバムでも最短では?ちゃんと数えたわけじゃないけど......)。
これまでの良くも悪くもJ POP圧の強いアレンジや、光であれ闇であれ全力で振り切った歌詞は鳴りをひそめ、音も言葉も自分の部屋で目の前で演奏して歌ってくれているかのような親密な穏やかさがあり、謂わばミスチルが自分らしさの檻から解放されたような作品になっているんですから!
だから、もしかしたらミスチルファンほどピンと来なくて私のようなミスチルアンチに嬉しいアルバムなのかもしれん、とも思ったり。
しかしミスチルほどの、この国を代表するロックスターが、こうしてロックスターという役割から降りて、老い行く不安を隠しもせずこういう枯れたアルバムで生身の姿を見せてくれるのはこのストレスフルな社会を生き抜くための大きな勇気になる......などと、私の方がいつものミスチルの歌詞みたいなことを言ってしまうくらい「らしさ」を脱ぎ捨てたアルバム。

もちろん、そんでも桜井和寿の描くメロディ、歌詞、そしてその歌声はいつも通り、いや過剰なアレンジを排したことでいつも以上に心臓に染み渡ってきます。
そして、それでいて尖ったミスチルを期待する我々を「こういうの欲しいんでしょ、くだらねえ」と突き放すような辛辣な「アート=神の見えざる手」や、ジャズと電子音楽を融合させたようなサウンドがおしゃれな「We have no time」などの奇抜な曲もあって、がっつり満足させてもくれるのが最高。ミスチルのファンでいて良かった!とアンチなのに思っちゃうし、スピッツにもこういう老成が足りねえよ、とすら思ってしまうので今回はスピッツより上の3位にしておきます。
特に好きな曲はミスチルの1曲目史上に残る暗さの「I MISS YOU」と、君と2人で生きていく(そして老いていく)という最小にして最大の幸せを噛み締める「黄昏と積み木」です。




2位 ずっと真夜中でいいのに。「沈香学」

はい、2位はこれにしました。
ほとんど配信シングルをまとめたような作品ではあるのでアルバム通して聴き込んだわけじゃないけど、シングルで聴いてた頃も含めたらスピッツ以上にたくさん聴いてるような気がするなぁと思って。
去年の年末あたりからずとまよにハマってた中でタイムリーにアルバムが出たのも嬉しかったし、曲のバリエーションや歌の表現力もどんどん上がってて、今後が楽しみになるアルバムでもありました。




1位 ヨルシカ「幻燈」

はい、というわけで今年の1位はこれです!
まさか自分がヨルシカにどっぷりハマるとは思ってもみませんでしたが、ハマっちゃいましたね。でも全部好きってわけじゃなくてやっぱこのアルバムは特別好きですね。文学作品へのオマージュというコンセプトにもワクワクするし、サウンドも過去作よりぐっとシンプルになっていつまででも飽きずに聴いていられる名盤です。





というわけで、今年のベスト10でした。
例年は音楽に詳しくないなりにももうちょいみんなが知らなそうなのを入れたりするんだけど、今年はマジであんま新作聴けなかったので売れたアルバムばっかになっちゃったけどまぁこんな感じです。
それではみなさま良いお年を!