偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

坂本龍一『音楽は自由にする』


2009年に刊行の、先日亡くなった坂本龍一氏の自伝みたいな本。

本書は坂本龍一が自身のこれまでの人生を振り返るインタビュー企画として雑誌で連載されたものをまとめた本です。
1950年代の幼少期の思い出から、70年代のYMOでの一世風靡、、80年代以降の映画音楽の仕事、00年代以降の社会的な発信まで、我々が知る坂本龍一という人の色んな側面についてを本人の飾らない言葉で読むことが出来るのがとても楽しかった。
私自身は坂本龍一のファンというよりはYMOの浅いファンでしかないんですが、それでも『戦メリ』や『ラストエンペラー』は好きな映画だし、単純にすげー人の語る言葉を読んでいるだけで楽しいんですよね。
まぁ、世界のいろいろな場所を訪れていろいろな景色を見ていろいろな人や文化と出会った人なので、旅の土産話を聞くような楽しさもありますし。
いいとこの子で子供の頃からやけに難しそうな本や音楽に親しんでいるあたり、無教養な私からするとイヤミっぽく感じてしまったりもするけど、かと思えばモテるためにバスケ部に入ったりする可愛げを見せてきたりしてギャップ萌えしちゃいました。

しかし、ミュージシャンというよりはもはや偉人に近いような人だけど、こうして自分語りを読んでみると「なりたいものとかが分からなくて流されて生きてきた」なんて言ってたり、変な意地を張ってYMOのメンバーと険悪になったりといった普通の人じゃんってエピソードもあって親しみが湧きました。と同時に、ベルトルッチ監督に脚本を直させるとかの度胸あるエピソードも出てきたりして、その掴みどころのない魅力に惹きつけられてしまいました。