偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ワイルド・アット・ハート(1990)

リンチ監督の作品以外とほとんどみてるんだけどこれは観てなかったので観ました。これで長編映画はあとインランド・エンパイアだけかな。


恋人のルーラの母親が送り込んできた死角を返り討ちにしたセイラー。2年ほどの刑期を終えて出所した彼はルーラと駆け落ちするが、ルーラの母親は再びセイラーへと刺客を放ち......。


大筋はめちゃくちゃシンプルな男女の逃避行映画なんですが、とにかく変なやつが大量に出てくるせいでなんか凄く変な映画に感じてしまうというリンチ節の効いた作品です。

とりあえず、ニコラス・ケイジ演じるセイラーとローラ・ダン演じるルーラがセックスしまくりながら、互いのことをぽつりぽつりと話しながらいい感じの車に乗って走ってくのがとりあえず単純に楽しい。
「この蛇柄のジャケットは魂の自由を信じる俺という人間の象徴だ」って何回も言うセイラーがじわじわと笑えるし、ルーラちゃんもなんかずっと詩的なことばっかり言ってて、普通の会話がそんな調子なのでなんか面白かった。
でも凄いのが、主に敵側の人間だけど脇役たちがキャラ濃すぎて彼らがめちゃくちゃ普通に見えちゃうところで。特にルーラのオカンはもうあまりにも気持ち悪すぎて悪役としては最高でしたね。その刺客の人たちもなんかみんなやけにキャラ立ってるし、なんなら一瞬しか映らない通行人もヤバいし、終盤活躍するウィレム・デフォーが気持ち悪すぎるしともう、ツッコミが追いつかないワケワカランのオンパレードでした。しかし映像とか演出が変なんだけどめちゃくちゃカッコよくてようわからんけど楽しい!

しかしテーマとしては生と死とか、『イレイザーヘッド』に通じる父親になることとか親離れとか意外と真っ当に分かりやすいのでラストはしっかり泣けたし、ガワがヘンテコな割に中身はシンプルなのが個人的にはとても好みでした。
なんせこういう破滅的な男女のロードムービー大好き人間なので(俺たちに明日はないとかバッファロー66とか)、とても楽しめました!
「いい魔女だ!」ってとこで「なんでアレがいい魔女だって分かるんだ」と笑っちゃったけど、これは元ネタのオズの魔法使観たらそのまんますぎて理解しました。いい魔女だわ。