偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ロスト・ボディ(2012)

上質な密室ミステリ映画だった『インビジブル・ゲスト』のオリオル・パウロ監督作品で、本作も最高のミステリ映画でした。


死体安置所の警備員の男がトリックに撥ねられた。男は何かから逃げてきた様子だった。そして、遺体安置所からはマイカという女性の遺体が消失していた。
イカの夫のアレックスは報せを受けて困惑した。マイカを殺したのは自分と愛人のカルラだが、死体の消失には心当たりがなく......。


深夜の事故から幕を開け、遺体安置所からの死体の消失、そして主人公である死体の夫のアレックスが殺したらしいことは分かってるけどだからこそ死体消失が不可解という半分倒叙な設定からしてミステリファンなら引き込まれずにはいられない!
モラハラ妻がめちゃくちゃ嫌なやつで、まぁこれなら殺してもしゃーないわと思わせてくれるのも、変に被害者に同情させずにゲーム的なミステリとして見せてくれるのが楽しい。
しかし、死体消失によってその嫌な妻が生きとるかもしれんというホラー的な煽りもあって、安置所の中のワンシチュエーションによる緊迫感も相まってけっこう怖さもあって良かったです。

序盤はややダレる気もしつつ、スロースターターでだんだんと面白くなって、面白くなり出したらそっからはノンストップで結末まで連れて行ってくれるスピード感もあり、なにより結末は(私が鈍いだけかもしれんが)全然見破れなかったです。
トリック自体の面白さもさることながら、伏線とミスリードが上手くて、多少無理筋ながらも頷かされてしまうくらいのパズルとしての説得力があってとてもよかったです。そうそう、ミステリ映画ってこういうのだよ!と久々に騙される痛快さを味わえた良作でした。
まぁ見破れても見破れなくてもよく出来たミステリ映画なのでミステリファンの皆さんにはぜひ観てみてほしいところ!







































































まぁ、細かいことを言えばそもそも親の仇に囮としてとはいえ体まで差し出すかとか、刑事の復讐にしては迂遠すぎるやろとかツッコミどころはありますが、主人公アレックス視点で進んでいた物語の裏で警部と娘の物語がもっとずっと前から水面下で進行していた......というタイプのミステリは(特に映画には映えて)好きなので、めっちゃ良かったです。
思い返せば警部の過去も娘の存在も序盤から仄めかされていたわけで、「最初からそうだったのか......」というやられた感が強くなってんのも上手い。うん、やられたわ。