偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

逆井卓馬『七日の夜を抜け出して』感想

本棚探偵さんで借りたやつ。


遊辺高校の新入生中里蓮は頂上(=超常)の見学に訪れる。
しかし、旧校舎にある部室には上級生はおらず、蓮は同じく見学に訪れた3人の同級生と共に部室に閉じ込められてしまう。夜明けまでに七不思議を全て解き明かし破壊しなくては永久に異界と化した学校に閉じ込められてしまう......という警告文を見た4人は協力して謎解きに乗り出すが......。


まぁ面白かったけど絶妙にノットフォーミーな感じではありました。

いかにもラノベの主人公という感じの男が主人公で、いかにもラノベのヒロインという感じのツンデレヒロインに、いかにもラノベのヒロインじゃない女という感じの博識な眼鏡っ娘に、なんか浮いてる寺と神社のハーフの武闘派坊主頭くんというパーティーで七不思議と戦っていくアドベンチャー
「超常」と呼ばれる七不思議が異能バトルものの敵キャラみたいなニュアンスの超常で、個人的にはもうちょい普通に「なんでこの七不思議が生まれたのか?」みたいな謎解きものを読みたかった......というかあらすじからそういうのを期待してしまったのでちょっと肩透かしを食らいました。
七不思議一つ一つとのバトルも一応意外性みたいなのは用意されているんだけどあまりインパクトはなく、最初のいくつかは面白いけどだんだんダレてきてしまうところはありました。まぁ「七不思議」なんだからしょうがないけど、ぶっちゃけ「四不思議」くらいで一つ一つをじっくり読みたかった気がする......。
キャラクターがいかにもって感じであんまり愛着を抱けなかったのも要因かも......。
あとこれは全然関係ないし私だけかもしれんけど、ヒロインの見た目が文章からのイメージと表紙イラストで結構乖離があってうまくイメージが定まらなかった。

良かった点。
短い中に七不思議っつーくらいだから7つ分の怪異のアイデアを詰め込んだ連作短編のように読めるけどそれとは別に本筋の「そもそもなんでこんなことになってるのか?」みたいなふわっとした謎にだんだん輪郭が与えられていくあたりも面白く、密度はかなり高い作品でした。
ラノベっぽいノリの中に津軽っぽい地域の民俗学っぽいエッセンスとかが入ってるのも新鮮な感じで面白かった。

あと、最後がやっぱり良いですね。アレを伏線にしちゃう不敵さには笑ったし、しかし青春ミステリらしくちょっと切なくほろ苦い余韻が残って、終わりよければ全てよしという感じで一気に評価が上がってしまいました。