偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

石田リンネ『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』感想

フォロワーのケーキ王子に無理やり買わされました。
ラノベミステリを読むの自体久しぶりで、初めて読む作者さんだったのでどんなもんやろと思ってたらかなり面白かったです。




就寝中、何者かに首を絞められ殺された女王オフィーリアは、妖精王リアの"呪い"によって、自分を殺した犯人を探すために10日間だけ蘇ることとなる。


まず設定とキャラが魅力的です。
一度死んで、おまけの一日ならぬおまけの十日間を得たオフィーリア。国王でありながら人に気を遣ってばかりいて結果良いように利用されて殺されたことを悔やみ、なりたかった強い女王になることを決意する......という死んでるけど前向きな主人公が熱い!
この蘇り設定がミステリ面にはあまり活かされてこないのは残念ではありますが、身勝手な男どもをぶちのめしながらどんどん強くなっていくオフィーリアの姿は痛快で読んでて楽しかったです。
また、素直な反抗期の弟とか、クズすぎて逆に憎めない気がしなくもない夫ら脇役も魅力的。ただ、それ以外の容疑者のおじさんたちがキャラが薄く類型的な感じなのが惜しいかなぁ、と。

で、ミステリとしては、まぁオーソドックスな作りで、設定を逆手に取ったりするような変な捻りとかはないんですが、そのシンプルさが魅力でもあると思います。
言われてみれば簡単だけど気づかなかったトリックに、犯人の正体に、真相を示す(手がかりというよりは)伏線など、細かい論理性やびっくりするほどの意外性はないものの、しっかり楽しめました。ミステリ風味のキャラ文芸と思って舐めていたら思わぬ収穫でした。
結末も、ああなることは分かってたけど、なるほどそうやるかというところが面白かったです。