偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

村田沙耶香『きれいなシワの作り方〜淑女の思春期病』感想


コンビニ人間』の1年前に刊行された、村田沙耶香による30歳を過ぎてからの心身の変化を綴ったエッセイ集。

なんせあの『コンビニ人間』とか『殺人出産』の作者のエッセイなのでどんな異常サイコな日常が綴られるのだろう......と恐る恐る読み始めたのですが、なんかめっちゃ普通の人で安心しました。
簡単に共感することを拒むような小説に比べてエッセイは「なんか分かる〜」の嵐。内容はアラサー女性ならではのものではあるんですが、私も男だけどアラサーなので普通に同じこと思ってることも多かったし、メイクやファッションなどの話題に関しても溢れる自意識に対してめちゃくちゃ分かる〜と思ってしまった。

私もアラサーになってだんだん体の変化というか、まぁ劣化を感じる日々です。
いつマッサージに行ってもガチガチですねと言われるのでもはや宝くじを当てて毎日通いたいし、鏡を見るたびに白髪増えたなと思うし、今までなかった謎の肉が腰とかお腹についてるし......。
そんな体の変化への不安とか抗いたい気持ちと、経年変化を素直に受け入れて「綺麗なシワ」を作っていきたい気持ちとの狭間に揺れる著者に微笑ましく共感してしまう素敵な一冊でした。