偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

川澄浩平『探偵は友人ではない』感想

前作『探偵は教室にいない』が良かったのですぐさま本屋さんへ走って続編である本書を買っちゃいました。

シリーズ第2弾ということで、今回は真史のファン(?)の後輩女子・彩香ちゃんという新キャラが加わり、彼女を媒介に真史と歩の依頼人以上友人未満みたいな関係にも変化が......という、シリーズ2作目らしい作品でやっぱり良かった......。
ミステリとしての理屈の捏ね回し具合も前作よりパワーアップしていて読み応えが増した気がします。

その分新キャラが前面に出てきてレギュラーキャラの印象がやや薄かったり、論理が煩雑だったりするきらいもなくはないけど、ともあれさらりと読めて不思議な愛着の湧くシリーズで、次作もあるのなら楽しみ......。


「ロール・プレイ」
1話目はやけに不穏な話でヒリヒリします。過去の事件を回想して語る話なので謎解き感は薄いですが、この不穏さと、しかし悪くはない後味とのギャップが素敵。
ただ、明かされてみるとあのキャラがそこまでするか?という違和感は感じてしまいます。


「正解にはほど遠い」
ケーキ屋さんのクリスマス企画のパズルという設定からワクワク。
パズル自体は簡単すぎず難しすぎずで良い塩梅のレベル設定だと思うけど、ヒントが婉曲的すぎて変に惑わされるだけになりそうな気が......。
ラストのアレはさらに迂遠で、探偵がそれに気付くと思うのは楽観的すぎないか?と思うけど、いや気付くんかい!


「作者不詳」
美術教師の怪しい言動と、美術準備室にあった真史のものらしい(しかし心当たりのない)手のデッサンという、どことなく不気味な感じの謎が魅力的。
細かいところから論理を捏ねくり回していくクロースアップの面白さは本書でも随一で、なるほどなるほどと頷かされるばかりだし、そこから導き出される思わぬ真相も印象的。
新キャラや美術教師が前に出てきつつもレギュラーキャラたちの掛け合いも楽しめて、本書でも1番好きなお話です。


「for you」
発端の謎が魅力的なだけに、そこから論点をズラして違う意外性を出してくる展開はむしろ肩透かしのように感じられてしまいます。
しかしシリーズとしては真史と歩の関係が僅かに変化するきっかけとなるお話で、今後の展開が楽しみになりました。なんせいつまででも読んでいられるような読み心地のいいシリーズなので、あと50冊くらい出して欲しい。